2017-06

2017・6・13(火)METライブビューイング「ばらの騎士」

     東劇  6時

 5時半少し前に会場に着いたが、折しも昼の部の上映が終り、お客さんがゾロゾロ出て来るところ。このオペラで、こんなに大勢お客が入っていたのか、とびっくりする。初期の頃とは比較にならぬ盛況ぶりだ。すっかり人気も定着したのだろう。慶賀の至りである。

 このR・シュトラウスの「ばらの騎士」は、5月13日のメトロポリタン・オペラ上演ライヴだ。METライブビューイングとしては、これが今シーズン最後のプログラムになる。掉尾を飾るにふさわしい上演内容と言っていいだろう。

 ロバート・カーセンの新演出と、ポール・スタインバーグの装置が洒落ていて、美しい。20世紀初頭のハプスブルク時代末期のウィーンという設定で、舞台装置も壁の色から床の色まですべてが濃厚な色彩にあふれているが、しかしそこはカーセンらしく、どこかにすっきりした雰囲気が舞台全体を貫いている。
 演技が微細で隙が無いのはもちろんだが、第3幕のエンディングには工夫が凝らされ、オリジナルのト書きとはかなり異なった光景が出現する。ロングの映像であり、しかも今日はかなり後ろの方の席で観ていたので、細部はよく判らなかったけれど、とにかく意表を衝いた幕切れの光景だったのは確かだ。

 元帥夫人を歌い演じたルネ・フレミングと、オクタヴィアンを歌い演じたエリーナ・ガランチャは、ともに今回のプロダクションが、この役をやる最後であるとのこと。
 圧倒的な人気はルネ・フレミングで、METの女王とか称されるにふさわしく、カーテンコールでは歓声は飛ぶわ、ビラは降るわで、凄い熱狂だ。確かに彼女は、独特の雰囲気と魅力を備えてはいる。

 しかし、歌手としての圧倒的な存在感は、やはりエリーナ・ガランチャのものである。出番が多いということからだけではない。歌唱の安定感と演技の巧みさが傑出している。オクタヴィアンというのは、女性歌手がズボン役を演じ、それが更に「女に化ける」という演技をやる複雑な役柄だが、そのどれもが実に微細で巧いのである。彼女のオクタヴィアンが観られなくなるとは、残念なことである。

 オックス男爵はギュンター・グロイスベック。無神経で無遠慮ながら決して下品ではない、という設定は、R・シュトラウスが求めたこの役柄の表現にぴったり合っているだろう。他に、ゾフィーをエリン・モーリー、ファーニナルをマーカス・ブリュック。この日の案内役と「テノール歌手」をマシュー・ポレンザーニが兼任、本人もそれをネタに司会し、他の歌手からも盛んに持ち上げられていた。

 指揮はセバスティアン・ヴァイグレ。この人、これまでナマで聴いたオペラでは、創る音楽がどうも殺風景なのが気になっていたのだが、この「ばらの騎士」は、録音で聴く範囲では安定していて、劇的な追い込みの部分ではなかなか優れたものがあった。10時25分終映。

 今シーズンのMETライブビューイングは、これで打ち止め。来シーズンのプログラムはすでに発表されているが、全10作品の中に、モーツァルトの「魔笛」以外、所謂ドイツ・オペラが一つも入っていないとは何たること。

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