2017-10

2017・6・9(金)N響 MUSIC TOMORROW 2017

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 ローレンス・レネスが指揮するNHK交響楽団が演奏した今回のプログラムは、岸野末利加の「オーケストラのための《シェイズ・オブ・オーカーShades of ochre》」(N響委嘱作品、日本初演)、マーク・アントニー・ターネジの「ピアノ協奏曲」(日本初演)、一柳慧の「交響曲第10番さまざまなー思い出の中に―岩城宏之の追憶に」(今年の尾高賞受賞作品)、池辺晋一郎の「シンフォニーⅩ(=第10番)《次の時代のために》」(同)という力作ぞろい。協奏曲でのソロは反田恭平。

 岸野末利加(きしの まりか)は、かつてIRCAM研究員を務めたこともある女性で、今年完成されたこの「シェイズ・オブ・オーカー」は、大きな流れの中に鋭く短い起伏が連続する強靭な力を持った曲だ。
 あたかも火星かどこかの地表に、尖った石があちこちに転がっている、といった光景を連想させるような荒々しさ。だが、これが実にカラフルな多彩さを感じさせ、すこぶる魅力的なのである。プログラムに載っている彼女自身のメモを読んで、オーカー(オークル)は南仏などにある赤土、黄土であることを教えられ、なるほどと思った次第。「オークルの陰翳」とは、言い得て妙である。そして「時間のカンバスに顔料を飛び散らせ、塗り付け、垂らす・・・・」という彼女の文章の中の表現も、まさにそれにぴったり合ったイメージの曲だなと感心した。

 実は今夜演奏された4曲の中で、私にはこれが一番面白かったのだが・・・・。
 ただ、これは演奏のせいだったかもしれないが、楽曲の構成において、そういう音景の連続が、次第に少し単調に感じられて来るきらいも、なくもなかった。もしくは、楽曲の構成上の問題かもしれない。

 英国の作曲家ターネジは、今夜の演奏会ではゲスト作曲家とでもいう存在か。
 荒々しく力動的な両端楽章には、時たまガーシュウィンの亡霊が出没するといった感もある。ほとんど出ずっぱりのピアノ・ソロはエネルギッシュだ。その中にあって、ヘンツェへの追悼曲でもある第2楽章は、叙情的で美しい。

 一柳慧の新作では、「打楽器奏者でもあった岩城宏之さんのイメージも組み込まれている」との表現(ブックレット掲載の自身の解説)どおり、ティンパニをはじめとする打楽器が活躍するのが、何となく微笑ましい。
 曲自体からは、故・岩城さんの顔や雰囲気は私にはあまり浮かんで来ないけれども、厳めしい序奏(フランクの「交響変奏曲」の冒頭を思い出させた)と、極めて闊達な主部との対比が際立っており、その主部におけるちょっとスケルツァンドな雰囲気の曲想が、敢えて言えば岩城氏の・・・・。
 なおこれは昨年作曲されたものとのこと。1933年生れの一柳氏が今なお失わない音楽のエネルギーは、まったくたいしたものである。

 池辺晋一郎の新作交響曲は、今日の各作品の中で、最大の音量で轟いた。明るさを失わぬ分厚い響層の音楽は、彼ならではのものである。
 終結近く、壮烈なクレッシェンドで最強奏に達したあとに鳴り渡る鐘の音が、彼の言う「次の時代のため」の響きなのだろう。それにしても、現代に在って、こういうヒューマニズムを、衒わず、躊躇わず、率直に語る彼のような作曲家の存在は、むしろ貴重ではあるまいか。
 これは仙台フィルからの委嘱作品で、武満徹作品の演奏会(昨年1月19日)で一緒に演奏されたものの由。武満徹へのオマージュを兼ねているとのことである。

 ローレンス・レネスという人は初めてナマで聴いたが、なかなかいい指揮者だ。オランダ出身で、今年47歳という。

コメント

N響が尾高賞受賞作品の披露演奏を、3月の定期演奏会でしなくなってからずいぶんとたちました。現代音楽の不得意な外人指揮者を3月に呼びにくいなどの背景があったようですが、これは非常に残念なことだと思います。それ以降、日本の現代音楽とN響の距離がずいぶん離れてしまいました。MUSIC TOMORROWに来るのはどうしても「その筋」のお客様が中心です。果たしてこれからもそのような「隔離政策」を続ける必要があるのでしょうか?放送響としての使命は?評論家の先生方には、そのあたりの運営面についてもぜひ突っ込んでいただきたいです。

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