2017-08

2017・5・27(土)インキネン指揮日本フィル「ラインの黄金」2日目

      東京文化会館大ホール  2時

 夕方5時からトリフォニーホールで上映・演奏されるチャップリンの映画「街の灯」に行くため、途中で失礼しなくてはならないので、今日はバックステージで聴く。
 客席に居ながら途中で出ては演奏者に失礼だし、だいいち、「あいつトイレが我慢できなかったんだろう」などとカンぐられ、馬鹿にされるのも癪だから。

 バックステージで、時にはスタッフや出演者たちとお喋りしながら聴いていると、30~40年前の放送の現場時代に戻ったような気がして、結構楽しいものだ。
 ただ、終演後なら話は別だが、本番中にバックステージへ行った場合には、やはり現場出身者の性というのか、精神状態は一瞬にして演奏者側、制作者側、スタッフ側に同化してしまう。それゆえ、いわゆる「批評行為」は、一切不可能になる。
 舞台裏や袖、控室などを行き来し、スタッフと話をしたりしつつ、第4場に入ったところまで聴く。

 昨日体調不良で出演できなかったローゲ役のウィル・ハルトマンは、今日は元気で出演した。それでも西村悟さんは楽屋や袖に詰めて、いつ何時たりとも代役が務められるようにスタンバイしていた。
 舞台裏上手側でニーベルハイムの鍛冶の音をたたく奏者たちが、冒頭からずっと座ったままで出番を待っていたのには驚いたり、感心したり。彼らがいざいっせいに叩きはじめると、さすがに物凄い轟音である。凄いだろうとは思っていたが、更に凄い。当初は10メートルほど離れて聴いていたものの、たちまち遠くへ逃げなくてはならなかった。

 序奏の間、上手側袖で出番を待つラインの乙女役の林正子さん、平井香織さん、清水華澄さんが、水で咽喉を湿したり、ストレッチをしたりしながら準備を整え、いよいよ舞台に出る直前に手を繋ぎ合って「本日もよろしくお願いします」と声をかわす光景━━あるいは、「出」をいったん終えて引き上げて来たリリ・パーシキヴィ(フリッカ)に「ブラ―ヴァ」とそっと拍手を贈れば、首をすくめながら嬉しそうに笑って頷き、楽屋へ引き上げて行く光景など。それらにすっかり感動してしまうのが、私にこの齢まで残っている現場感覚というものである。

 オーケストラは、昨日の初日より今日の方が、やはりノリがよかったようだった。

コメント

充実の舞台

2日目は、初日東条先生のご指摘は、ほぼ克服され、素晴らしい舞台となった。特に前日不出演のハルトマンの歌唱と演技は、「ハルトマンオンステージ」「ローゲの黄金」の様相を呈した。終幕は盛り上がるが、その前は、チョコチョコやっているようなこの曲では、彼のような巧者の存在で、一気に引き締まる。他の出演者も素晴らしい。聴きながら、48年前の同じ文化会館での日本初演を思い出していた。若杉弘指揮読響、大橋国一、栗林義信などの当時のおなじみの歌手達と共に、別の意味でおなじみだった立川澄人が出演していたのが記憶にある。確かファゾルトだったように思うが、何で立川澄人がワーグナーなんだ?と当時は思った。(清登になったのは、この直後か。この辺は、東条先生のほうがお詳しい。)「ワルハラの入城」の途中から興奮した聴衆が拍手をし始め、終わる頃には大きな拍手となっていたのは、まざまざと憶えている。

素晴らしいの一語

2時間半の長丁場ゆえ、言い出せばいろいろとキズはあったりもしますが、そんな僅かな不満などすべて忘れ去ってしまうほど、心底満ち足りた思いに浸った圧倒的に素晴らしい舞台でした。聴衆の拍手、ブラヴォー、帰り際に交わされる賞賛の言葉の数々もそのことを十分に物語っていたと思います。
ブラームスではきれいにまとめたインキネンに懸念を覚えましたが、どうしてどうしてワーグナーでこんなにもいい音を導き出すとはあっぱれ。それに応えた日本フィルもあっぱれ。本当にラザレフ以降、このオケはうまくなりました。
後藤さんから最初にお断りのあったハルトマンは「一体あの予防線はなんだったのか」というくらい、実に巧くて文句のつけようがありませんでした。bravo vpo さんがおっしゃるように彼によって引き締まりました。あらかわバイロイトでのクンドリーで感銘を受けて以来ファンの池田香織さんもエルザで引き締め、アルベリヒも充実・・・とみなさん要所要所で役割を果たしてました。
オケ、声楽陣のみならず、光の演出も巧み、コンサート形式での限界をあまり意識させないシンプルな演出等々、すべてがうまく溶け合ってこれ以上望めないほど傑出した「ラインの黄金」でした。

バックステージ

生き生きとしたバックステージ・レポート、ありがとうございました。とても面白く読ませていただきました。私のような一般人には窺い知れない世界なので、興味深かったです。

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