2017-08

2017・5・26(金)インキネン指揮日本フィル「ラインの黄金」初日

      東京文化会館大ホール  7時

 日本フィルハーモニー交響楽団と、首席指揮者ピエタリ・インキネンによるドイツ・ロマンは音楽シリーズの一つの頂点、ワーグナーの「ラインの黄金」の上演。コンサートマスターは扇谷泰朋。

 演奏会形式ではあるが、シンプルな照明演出と、ステージ前面での必要最小限の演技も施される。演出は佐藤美晴、照明は望月太介だが、比較的間際になってからの演出依頼で、しかも通し練習が事実上出来なかった状態の舞台にしては、よく仕上げたものだと思う。

 インキネンのワーグナーは、日本フィルとの演奏では既に「ワルキューレ」第1幕や、「ジークフリート」と「神々の黄昏」の各抜粋などで聴いていたが、今回はその「ワルキューレ」での好調さを取り戻したような指揮である。
 彼のワーグナーは、いくつかのダイナミックな頂点の個所を効果的に盛り上げつつ、全曲を衒いなく率直に指揮して行くタイプのものであり、そのストレートな指揮が、この少し散漫な音楽構成の「ラインの黄金」ではむしろ良い結果を生んでいたと思われる。

 日本フィルも、今日は初日とあって、金管には時々綻びがあったが、人間のやることだから仕方がないとはいえ、一流オーケストラたるものはそういう細かいところをも手落ちなくやっていただきたいという気がする。
 冒頭の8番ホルンの最初の音がpでなくmfになり過ぎていたり、幕切れの壮大な和音の中でトロンボーン群のバランスが悪かったりしたのも気になったし、第4場での宝を積み上げる前の個所の「巨人の動機」のティンパニ(Dover版スコア251頁のフォルテの個所)が落ちてしまったのにはギョッとさせられた。
 しかしまあ、そういった細かい個所を除けば、日本フィルは慣れぬワーグナーものでよくぞこれだけ好演を聴かせてくれた、と言えるだろう。

 今回の出演歌手は以下の通り━━ユッカ・ラシライネン(ヴォータン)、リリ・パーシキヴィ(フリッカ)、安藤赴美子(フライア)、畠山茂(ドンナ―)、片寄純也(フロー)、池田香織(エルダ)、西村悟(ローゲ)、山下浩司(ファーフナー)、斉木健詞(ファーゾルト)、ワーウィック・ファイフェ(アルベリヒ)、与儀巧(ミーメ)、林正子(ヴォークリンデ)、平井香織(ヴェルグンデ)、清水華澄(フロスヒルデ)。
 このうち、西村悟はウィル・ハルトマンの、与儀巧は高橋淳の、それぞれ代役出演である。

 それぞれ、見事な歌唱と好い演技だったが、とりわけファイフェの明快で強烈な「若々しい精力的なアルベリヒ」の表現と、びわ湖ホールの「ラインの黄金」で絶賛された西村悟の「相手をバカにしまくっているローゲ」の表現がひときわ映えた。
 巨人役2人も荒々しい馬力が充分であり、ラインの乙女役3人も魅力的かつ華麗に歌い動き、ミーメも哀れっぽさを巧く出し、エルダは貫録、フライアはまさに清純、全員が当たり役という感である。
 ラシライネンは、さすがに巧者ではあるものの、この作品のヴォータンとしては声も少し老け役に過ぎ、また演技もほとんどやらずに泰然としているように見えたが・・・・。

 幕切れ近く、舞台裏で歌う3人のラインの乙女たちのアンサンブルが、ある個所で乱れ、オケと合わなくなったのにはヒヤリとしたが、あとで聞いてみると、副指揮者がいないので、テレビの画面だけでインキネンの指揮を見ながら歌っていたとのこと。これではちょっと苦しかったろう。
 だがこれらはすべて、先に触れたオケの問題点と同様、明日の公演では解決されるだろうと思われる。

 日本フィルが総力を挙げた今回の「ラインの黄金」。余勢を駈って「指環」ツィクルスをと期待したいところだが、恐ろしくカネのかかる企画だから、経営難の自主運営オーケストラとしては、容易いことではあるまい。事務局としては、インキネンが「やろう」と言い出しはしないかと、内心冷や冷やしている由。
 だが、今日の演奏会では、演奏の途中で出て行ってしまう客が、なぜか何人もいた(と言っても数人だが、これは多い方である)。定期公演なので、ワーグナー嫌いの会員もいるのかもしれない。もったいない話だ。
 9時40分終演。

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