2017-06

2017・5・23(火)ロウヴァリ指揮タンペレ・フィルハーモニー管弦楽団

      東京文化会館大ホール  7時

 フィンランド共和国独立100年記念行事の一環とか。
 ヘルシンキの北東160キロ、内陸にある街タンペレを本拠とするオーケストラで、かつてハンヌ・リントゥが率いていたが、2013年からこのサントゥ=マティアス・ロウヴァリが首席指揮者を引き継いでいる。
 ちなみにタンペレは、例のムーミン谷博物館がある都市だが、今年夏には新しいムーミンの博物館が開館するのだそうで、今日もホワイエにトーヴェ・ヤンソンの画などがいくつか展示されていた。

 今日はもちろん、シベリウスの作品集だ。「エン・サガ」、「ヴァイオリン協奏曲」(ソリストは堀米ゆず子)、「交響曲第5番」というプログラムで、アンコールには「フィンランディア」と「悲しきワルツ」。

 このオーケストラは、なかなか好い。東京文化会館大ホールのデッドな音響をものともせず、豊かな音をいっぱいに響かせた。
 ロウヴァリは例のごとく踊るような、ユニークな身振りによる指揮で、大胆奔放にオーケストラを煽り立てる。「エン・サガ」など、随分荒っぽく激しい演奏で、神秘的な古譚の世界という曲想からは遠い。
 ロウヴァリ、やはりこういう調子で押しまくるつもりなのかなと、些か辟易したが、次の「ヴァイオリン協奏曲」になると、打って変わって整然たる均衡をオケから引き出し、堀米の落ち着いたソロを支えたのには驚いた。このロウヴァリという若手は、なかなかのクセモノである。

 「第5交響曲」では、ロウヴァリは、パンチの効いた、強烈なメリハリを持った演奏を創り出した。荒っぽいデュナミークや、やや誇張したテンポを駆使して強引に煽る個所も多いが、しかしそれらの細部を極めて緻密に構築しているところは、端倪すべからざる力量である。第1楽章後半など、弾むように快調なテンポとリズムで一気に進めるその流れが実にいい。第2楽章のような叙情色の強い部分でも、その快いリズム感が生きる。

 「フィンランディア」も、テンポや起伏にかなり誇張のある演奏だったが、金管と打楽器の戦闘的なリズムにも、あるいはあの「フィンランディア賛歌」としても有名な主題にも、独特の感動的な情感があふれていた演奏だったのには、ちょっと胸が熱くなった。これはもう、同国人としての共感が生む演奏だろう。壮大に構築された終結部の演奏にも、他の国のオケでは出せないような不思議な感情の発露がある。こういう演奏で聴く「フィンランディア」は、いやシベリウスの作品は、素晴らしい。

 このオケ、聴けて良かった。最良の意味でのローカル的な味を、今なお持ち続けているオーケストラである。この見事な民族的個性、地方的特色を、今後も大切に持ち続けて行ってもらいたいと思う。
 客の入りがあまりよくなかったのは残念だったが、それでも熱心な人たちが集まっていたようである。最後は熱狂に包まれた。

コメント

拝聴できてよかったです!

大阪ザ・シンフォニーホールでのプログラムは「フィンランディア」「ヴァイオリン協奏曲」(ソリストは堀米ゆず子さん)「交響曲第2番」アンコールは「悲しきワルツ」「カレリア組曲」でした。千秋楽はかなり気合いが入っていましたよ。東条先生のおっしゃる通り、同国人の共感からくる圧倒的情熱、民族的底力は、異国のオケでは真似できないなぁ!と私も拝聴できてよかったと思いました。そうそう、プログラムの解説は東条先生でしたよね。参考になりました。有難うございました!

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