2017-09

2017・4・25(火)大植英次指揮大阪フィル 「カルミナ・ブラーナ」他

       ザ・フェスティバルホール  7時

 広島からは24日朝に帰京していたのだが、今日また大阪へ。
 これは大阪フィルハーモニー交響楽団の4月定期初日。桂冠指揮者の大植英次が指揮したのは、ベートーヴェンの「第7交響曲」と、オルフの「カルミナ・ブラーナ」である。リズムをテーマにしたプログラミングといえようか。
 後者での協演は森麻季、与那城敬、藤木大地、大阪フィルハーモニー合唱団、大阪すみよし少年少女合唱団。コンサートマスターは田野倉雅秋。

 大植英次が、朝比奈隆のあとをうけて大阪フィルの音楽監督に迎えられたのは、2003年のことだった。あの時は私も、NHKーTVの「芸術劇場」で黒崎めぐみさんと対談しながら、老練の「創業者社長」のあとに清新な若手指揮者を起用してイメージを一新した大阪フィルの英断を讃え、ミネソタ管弦楽団音楽監督として優れた成果を上げていた大植英次の活躍に満腔の期待を捧げたものである。
 それから早や14年が経つ。今の大植英次は、再びかつてのようなエネルギッシュな勢いを取り戻しているようである。

 ベートーヴェンの「7番」では、大植は、殊更な誇張や演出を一切排し、速めのテンポで押しに押した。両端楽章での提示部リピートは行わず、第3楽章でもスコア指定の最小限の反復を行なうのみなので、演奏時間も32~33分というところだったろうか。第4楽章は煽りに煽ったテンポで盛り上げられた。

 三度目あたりのカーテンコールの際に、オーケストラが大植の合図にもかかわらず起立せず、拍手を享ける権利を指揮者に譲ったようにも見えたのだが、この時にコンサートマスター以下、ステージ前方の奏者たちがかんじんの指揮者を称えるような動作をせず、拍手も行なわず(後方の金管あたりの奏者たちは拍手をしていたが)、まるで「お前だけで答礼しろ、立つのは嫌だ」と拒否しているように見えたのは、何とも異様な感であった。ちぐはぐな光景に、客席もちょっとざわめいた。ステージでの挙止は、もっとスマートでありたいものだ。

 「カルミナ・ブラーナ」では、大植は「7番」の時とは打って変わって、テンポを緩急に激しく動かし、デュナミークの対比も極度に強調して、起伏の大きな構築を行なった。
 終演後に楽屋を訪れた私の顔を見るなり彼は、「ね、今日はスコアの指定通りのテンポでやったよ。ここまでは120、ここから130、って・・・・。そのテンポを変えるのをみんなはたいてい、いい加減にやるだろ。今日のがオルフの書いたテンポなんだから」と、例のごとく熱中的な早口で語り続けていた。

 それは確かに認めるし、事実、演奏は大変スリリングなものだった。ただしお言葉を返すようだが、多くの場合、そのテンポの変動は、今日のように「この小節から」突然変わるのでなく、もう少しアッチェルランド気味に、なだらかに行なわれるのではないか? スコア通りに突然テンポを変えると、この曲はかなり尖った、ヒステリックな異常さを露呈することになる。それはそれで面白い様相を感じさせることは事実だが、聴いていると些か疲れるのも事実だ。
 特に第1部では、大植はいくつかの転換の部分で大きな間を採り、緩徐部分では非常に遅いテンポを採っていたが、これが作品全体の滔々たる流れを堰き止めた印象を生んでしまうので、私としては少々共感しかねるところがあった。

 だが一方、「酒場にて」の場面では、大植は疾風怒濤の荒々しさでこの酒乱の光景を描き出し、「白鳥の嘆き」の個所も適切なテンポでコミカルな光景をつくり出していた。
 この個所に限らず彼は、オーケストラの音色にも気を配っている。特に第1部の「太陽は万物を整え治める」でのヴィオラの音色とそのアタックなど、実に巧い響かせ方だなと感心させられたものである。

 大阪フィルは、さすがに老舗の貫録、弦16型編成の重量感あふれる響きで、広大なフェスティバルホールをいっぱいに轟かせたのはさすがである。弦楽器群のまとまりの良さは、いつもながら印象的だった。ただ、管の一部━━ホルンとフルートには、もう少し細部までの丁寧な仕上げが欲しいところである。

 今回素晴らしかったのは、声楽陣だ。特に3人のソリストの声の明晰さと、歌唱の闊達さは見事であった。「焼かれた白鳥」での藤木大地(カウンターテナー)の演技はやや控えめながらも、ファルセットはさすがに安定していた。
 与那城敬も、このバリトンのパートがこれほどはっきりと響き、かつ演技的にも解り易く表現されたのは、日本人の演奏ではこれまで滅多に聴いたことがなかったほどである。森麻季も爽やかで伸びのある声で、清純な第3部「愛の誘い」を美しく歌ってくれた。

 そして同等に称賛されるべきは、大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指揮・福島章恭)である。多分170人近くの大編成だが、とりわけ女声に膨らみと柔らかさと量感があふれていた。

 9時15分終演。この日は「レム新大阪」に一泊、翌日早朝の「のぞみ」で帰京。

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2695-f86bc2af
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」