2017-11

2017・4・23(日)広島交響楽団 廿日市定期演奏会(第20回)

     はつかいち文化ホールさくらぴあ大ホール  3時

 先週日曜日に続いて、また広島を訪れる。今回も先週同様、文化庁の芸術文化振興基金の「事後評価」の調査を兼ねている。この3年ばかリ、専門委員を務めているのだが、今年度はおこがましくも主査のポストに在るので、各地のオーケストラを聴いて報告書を書く機会も例年以上に増える。
 今日のも同団体の依頼によるものだが、何しろ廿日市という場所に足を踏み入れるのはこれが初めてなので、興味津々だ。

 広島からJR山陽本線に乗り換え、次に五日市駅で広電(この電車、乗客が少ない時には車両のバネが弾んで上下にリズミカルに揺れるのが面白い)に乗り換える。似たような駅名が並んでいるので、「廿日市駅」で降りてしまったが、駅前はガランとして人もいないし、なんにもないのに慌てた。地図を見直して間違いに気づき、自己憐憫に浸りつつ、次の電車を待ち、もう一つ先の「廿日市市役所前」まで乗る。
 快晴好天、空気も爽やかなので、街をぶらぶら歩いて行く。すると間もなく、市役所やホールやショッピングモルが並んでいる賑やかな一角が見えて来る。

 コンサートは、広響の「第20回廿日市定期演奏会」である。「20回」とはいっても、これが「さくらぴあ」の開館20周年記念事業の一環なので、年に一度のご当地公演というわけか。
 今日は現田茂夫が客演指揮、チャイコフスキーの「眠りの森の美女」のワルツ、「弦楽セレナード」および「ロメオとジュリエット」という曲目で前後を固め、真ん中はオペラコンサートで、グノーの「ファウスト」のワルツとプッチーニの「マノン・レスコー」間奏曲を演奏したほか、ゲスト・ソリストの佐藤しのぶがグノーの「宝石の歌」、プッチーニの「わたしのお父さん」「ある晴れた日に」「可愛い坊や」を歌う、というプログラムだ。

 佐藤しのぶは相変わらず華やかな雰囲気で、その人気も圧倒的である。彼女が歌った曲と、そうでない曲とでは、ほぼ満席の聴衆の拍手の量が全く違う。
 1曲目のオーケストラだけの「眠りの森の美女」のワルツのあとなど、指揮者が指揮台を降りて歩き始めた瞬間に、もう拍手が終ってしまったのには、心底驚いた。現田さんが袖に消えるまで手を叩いていたのは、私と、多分他に2、3人くらいだったのではないか?

 しかし、佐藤しのぶが再び現れてビゼーの「ハバネラ」を歌ったのを最後にコンサートが終ると、客席を出て行く中年以上の女性たちが口々に「良かったねえ」「良かったねえ」と言葉を交わし合っているのだ。そういう声を聞くと、みんな本当に心から愉しんでいたんだな、と、やはり胸が熱くなってしまうのである。

 このシューボックス型ホールは、桜の木を素材に使っている由。ステージの景観も落ち着いているし、アコースティックも予想外に良いのには感心した。客席数1090ほどだから、あまり大きな音には向いていないのかもしれないが、オーケストラのバランスさえ完璧ならば、実にいい音で響く。

 現田茂夫のまとめもよかったが、広響(コンサートマスターは佐久間聡一)自身も、会場のアコースティックに巧く合わせて行ったのだろう。1曲目のワルツよりも次の「弦楽セレナード」の方が、そしてさらに最後の「ロメオとジュリエット」の方が、ずっと演奏も良かった。特に「ロメジュリ」は━━アンダンテの個所のテンポが遅すぎて楽曲全体のバランスを失わせるきらいがなくもなかったが━━聴き応えのある演奏だった。

 広響の快調さは1週間前と同様で、特に弦楽器群の音色の良さは、今日も印象に強く残った。
 あの身振りの大きいヴァイオリン奏者(Yさん、とおっしゃるのですか?)は、今日は第1ヴァイオリンの第2プルトの外側に座っていて、終始ニコニコと聴衆に微笑みかけていたのが、とてもあたたかい、素晴らしい雰囲気を生んでいた。彼が「広響名物」的存在で、「彼から元気をもらう広島市民も大勢いるようだ」という、3月18日の広響の項にコメントで頂戴したご意見は、たしかにその通りかもしれない。もしかしたら、あの笑顔は「広響の宝」かもしれない。だいいち私自身が「あの人は、今日はどこに座っているのかな」と目で探してしまったほどなのだから━━。

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