2017-05

2017・4・15(土)インキネン指揮日本フィル ブラームス:3番、4番

      BUNKAMURAオーチャードホール  2時

 首席指揮者ピエタリ・インキネンのもと、ブラームスの交響曲ツィクルスの一環で、今日は「第3番」と「第4番」。コンサートマスターは木野雅之。

 日本フィルをこのオーチャードホールで聴く機会は、あまりない。唯一、山田和樹指揮の「マーラー/武満シリーズ」はここで開催されているけれども、日本フィルのふつうの「落ち着いた雰囲気」(?)の定期演奏会を聴くのは、今回が初めてかかもしれない。
 だが、インキネンのもと、日本フィルは、このオケがこれまであまり聴かせなかったような、しっとりとして余裕のある、重厚でスケールの大きい、精緻に設計された演奏を繰り広げ、「慣れない」このホールを見事に鳴らしてみせた。最近の日本フィルは、こういう幅広さを出せるようになった。めでたいことである。

 インキネンは「3番」と「4番」を、ともにストレートに、外連の一切ない構築で指揮してみせた。
 たとえば老獪な故マゼールとか、一癖も二癖もあるパーヴォ・ヤルヴィなどがこの2曲を一つのコンサートで指揮した時には、片方の曲を劇的に激しく、もう一方を整然と構築するというように、プログラムの中で大きな対比をつくったものだった。しかしそんな演出をやらずに、2曲とも真っ正直にやるところが、インキネンなのだろう。
 2曲とも遅めのイン・テンポで押し通す。変化は、デュナミーク、音色、表情などに反映して行くという手法だ。事実、それは実にうまく行っていた。

 「3番」は、ブラームスの交響曲の中では私が一番好きな曲なのだが、第1楽章が始まった時、何といい曲だろうと思わされた。いくら好きな曲でも、そう感じさせてくれる演奏に、毎回巡り合えるとは限らない。
 インキネンは、何一つあざとい細工や演出を加えることなく、滔々と押した。フルトヴェングラーのような、巨大な世界が揺れ動くような演奏にも圧倒されるが、今日のように、たっぷりとした響きで悠然と歩みを進めて行く演奏も、いい。それは決して老成した演奏ではない。あくまで若々しく、すっきりした表情がこもっているのである。あの美しい憂愁のこもった第3楽章をも、彼らは真摯に演奏してくれた。

 「4番」に入った時は、前記のような指揮の特徴から、もしかしたらこれも「3番」と全く同じアプローチでやるのか、と、ちょっと心配になったのは事実だったが、やはり曲想の影響もあって、こちらの方が劇的な表情もおのずから出て来る。第1楽章や第3楽章での終結に向けての追い込みは、聴き応えがあった。
 さらにいっそう見事だったのは、第2楽章と第4楽章である━━内声部が明晰な形を採りつつ、あざやかに交錯して行き、ブラームスの音楽ならではの精緻な綾をつくり出すことに成功していたのだった。いい曲だ、と心から感じさせられた。

 まあ、こういう演奏はしかし、良い指揮者と良いオケなら、必ずやるものである。だが、長年の間、荒っぽいパワーで鳴らしていた日本フィルが、とうとう━━というか、再びというか、つまり60年前の創立直後の渡邉暁雄時代を思い出させる━━このような演奏スタイルを取り戻した・・・・それだけでも嬉しいことではなかろうか? 

コメント

日フィルに何を求めるのか?

ご指摘のように、日フィルはかなりの高みに達した気がいたします。この日の演奏も、前のブルックナー8番でも感じたような、大袈裟に言うとすべてにレガートがかかったような(好悪が分かれるとはいえ)美しい演奏で、しかも、やるべきことはきっちりやり遂げて何ら不満を感じさせませんでした。が、一つだけ、本当に一つだけ言うならば、同じレベルの高い演奏水準のラザレフのときと比べてワクワク感というものがどこかへ行ってしまったような気がします。寂しいと言えば寂しい、でも、それだけ、日フィルが変貌を遂げて普通でも十分すごい演奏をするオケになったということで喜ぶべきなのか・・・これから何をこのオケに期待して聴きに行くのか・・・複雑です。

土曜日、聴きました。一階席の後方です。3番の第二楽章以降、音楽が張りだしてきたような感じを受けました。若い女性の観客も多く、イケメン?もあるのかと思いました。
さわやかなブラームスでした。インキネンいいですね。

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