2017-08

2017・3・28(火)山田和樹指揮仙台フィル 特別演奏会

      イズミティ21・大ホール  7時

 仙台フィルハーモニー管弦楽団と山田和樹(ミュージック・パートナー)のシリーズVol.4で、「ザ・ロマンティック」と題され、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」(ソロは萩原麻未)と「交響曲第5番」が演奏された。コンサートマスターは神谷未穂。

 山田和樹の指揮は、欧州での活躍が拡がるにしたがい、以前よりもいっそう感情の振幅が激しく、アクセントの強い尖った音楽づくりになって来たような気がする。欧米の指揮者もオーケストラも、概してみんなメリハリの強い演奏をつくるから、それも当然のことだろう。
 「第5交響曲」では、その劇的な起伏の設計も、見事なものだった。

 ただ、仙台フィルはやはり日本のオーケストラであり━━たとえば今日のように、金管(特にトロンボーン)を力強く鳴らし、遮二無二突進するエネルギーを全開した場合、指揮との間に少しく齟齬を生じさせ、音も混濁するという傾向なしとしない。
 いや、しかし今日は、そういっては気の毒だ。何しろ、このホールの音響たるや、東京で言えばその昔の日比谷公会堂並みのもので、最強奏の音は寸詰まりになり、金管は潤いを欠き、残響はゼロである。どんなオーケストラもここではその美しさを発揮できないだろう。
 そうした中でも、第4楽章序奏のような、大きな音を出さないけれども豊麗な響きを持っている個所では、仙台フィルもそのしっとりした味の片鱗を聴かせてくれたのは嬉しい。

 といっても、それらの問題とは関係なく、木管楽器の一部に多少不安定なものが一度ならずあったのは気になるところだ。またティンパニも豪快でパワフルではあるけれど、トレモロの締め括りの個所だけは、少し乱暴ではないか?

 協奏曲では、萩原麻未が、先日東京での大友=群響との協演の際よりも、更に振幅の激しい、自由な感興の加わったソロを聴かせてくれた。オーケストラとしても、先日のベテラン大友直人よりも、若く冒険心に富んだ山田和樹の指揮の方が、彼女の奔放な躍動に対し積極的に「応戦」していたように感じられる。

 彼女のアプローチは面白い。聴き慣れたこの曲のあちこちで、ピアノのソロは、しばしば意外な異相を以って響き渡る。第2楽章の終り近くなど、ピアノが長いソロを終って主題をdolceで取り戻す個所(第147小節)で、彼女が極度の最弱奏に音量を落し、オーケストラのホルンと弦の裡に自らを埋没させたかのような演奏を聴かせた時には、こちらもギョッとさせられたほどだ。━━そういうことも含めて、名曲に対しすべての面で常に新しいアプローチを試みようとする彼女の姿勢は高く評価されてよい。
 こういう大胆なピアニストが若い世代にもっと出てくれば、日本のピアノ界も更に面白くなるのではないか。

 彼女が弾いたアンコールは、バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番」の「ガヴォット」をラフマニノフが編曲したもの。そしてオケのアンコールは、グルジアの作曲家ヴァージャ・アザラシヴィリの「無言歌」という作品。後者はマエストロの思い入れの曲だそうだが、言っちゃ何だけれど、私にはあまり・・・・。

 そのマエストロ山田和樹は、この演奏会をもって、仙台フィルのポストを退任する。同じくこの3月末で退任する事務局の村上満志・演奏事業部長とともに、終演後のステージ上では、楽員らに胴上げ(!)されていた。いいカイシャである。
     別稿 音楽の友5月号Concert Reviews

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