2017-10

2017・3・23(木)新国立劇場 ドニゼッティ「ルチア」

      新国立劇場オペラパレス  2時

 新制作で、モンテカルロ歌劇場との共同制作。今日は4回目の上演。

 演出はジャン=ルイ・グリンダ、舞台美術はリュディ・サブーンギ。指揮がジャンパオロ・ビザンティ。ルチアをオリガ・ペレチャッコ=マリオッティ、エドガルドをイスマエル・ジョルディ、エンリーコをアルトゥール・ルチンスキー、ライモンドを妻屋秀和、アルトゥーロを小原啓楼、アリーサを小林由佳、ノルマンノを菅野敦。東京フィルハーモニー交響楽団と新国立劇場合唱団。

 出来栄えは上々といえるだろう。
まず、タイトルロールのペレチャッコが素晴らしい。7年前、ナントの「ラ・フォル・ジュルネ」で初めて彼女を聴いた時には、名前の表記(注)さえどうすればいいのかと迷ったほど、未知のソプラノだったが、いい歌手になった。
 聴かせどころの「狂乱の場」での歌唱も伸びやかで安定していて━━「狂乱の凄み」には未だ少々不足するところはあるにしても━━安心して聴いていられるのがいい。

 迫力の点ではルチンスキーが見事で、聴かせどころでは声をいっぱいに延ばして大見得を切り、オペラの醍醐味を存分に味わわせてくれる。
 これに対しジョルディは、ルチアが夢中になる恋人役としてはやや線が細いのが物足りない━━歌唱にしても演技にしても、「婚礼の場」に乗り込んで来た時など、憔悴しきってやけっぱちでやって来たような印象を与えるし、敵役のルチンスキーとの対決の場では押され気味、という印象になる。そういう神経質なエドガルド表現が今回の狙いだというのなら、それはそれでいいのだろうけれども。
 有名な六重唱は、完璧な出来であった。

 舞台構成は、比較的スタンダードなものである。舞台美術は、スコットランドの海辺の城で繰り広げられるドラマというイメージを生かし、岩壁に打ちつける波濤を映像で巧みに描き出す一方、野外や室内の光景を写実的あるいは幻想的につくり出して、極めて美しい。

 グリンダの演出も、基本的にはト書きに沿っているが、演技も細かく、まずドラマとしても過不足のない、バランスの取れた舞台であろう。
 最も注目されるのは、ルチアの性格上の描写だ。ここでは、彼女は楚々としたおとなしい女性でなく、ボーイッシュな服装と、兄の強権に毅然として反抗する態度とで、自立した女性として描かれる。つまり、この陰気な一家においては、彼女は当初から異質な、自由に憧れる女性なのであり、それが旧いしきたりによって無惨にも粉砕されて行く━━という描き方なのである。

 モンテカルロ歌劇場総監督を務めるグリンダ(☞訂正 ビザンティ。失礼しました)という指揮者は、まだ若いらしいが、いいテンポで指揮していた。東京フィルを上手くまとめ、安定した演奏を引き出した。響きが全体的に軽かったのは、指揮者の解釈もあるのだろうし、またコントラバス群が正面でなく、下手側に配置されていたせいかもしれぬ。

 今回は、六重唱の場面もほぼノーカットで演奏されたのはありがたい。
 そのあとのエンリーコとエドガルドの仇敵2人が応酬する場面も、カットされずに演奏されたのが嬉しい。ここは私も好きな個所なので━━昔、何かの解説で、「この場面は音楽も繰り返しばかりで単調なので、上演の際に省略されることも多いが、惜しくない」とかいう文章を読んだことがあったが、とんでもない話である。最近はしかし、ノーカットで上演されることが多いだろう。
 今回の演出では、ここは「嵐の夜の城の中」という設定でなく、荒々しい波浪が打ちつける断崖の上に設定されていて、なかなか雰囲気があった。

 なお「狂乱の場」では、サシャ・レッケルトが演奏するグラス・ハーモニカが使われ(実際に使用されたのはヴェロフォン)、これは柔かい夢幻的な響きで、ペレチャッコの歌を美しく彩っていた。この場面の「この世ならざる光景」を描くには、やはりフルートよりもグラス・ハーモニカの神秘的な音色の方が適しているだろう。

(注)olga Peretyatko ロシア人だから「オルガ」でなく「オリガ」だろう。「ペレチャッコ」は、東京ラ・フォル・ジュルネは「ペレチャツコ」と表記していたが、こちらの方が「正確に近い」のでは?

コメント

指揮者

中段の指揮者の記述はビザンティが正ではないでしょうか

訂正

指揮者間違ってますよ。

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