2017-05

2017・3・18(土)音楽監督・秋山和慶と広響のファイナル「英雄の生涯」

      広島文化学園HBGホール  3時

 午前中の新幹線━━連休のため全車両満席━━で名古屋から広島へ移動、広島交響楽団の第368回定期を聴く。

 1998年から、最初は首席指揮者兼ミュージックアドバイザー、04年からは音楽監督・常任指揮者として広響をリードして来た秋山和慶が、モーツァルトの「ディヴェルティメント K136」と「クラリネット協奏曲」、R・シュトラウスの「英雄の生涯」というプログラムで在任中最後の定期演奏会を飾る。協奏曲では名手ダニエル・オッテンザマーが協演して花を添えた。コンサートマスターは佐久間聡一。

 モーツァルトの「ディヴェルティメント」は、マエストロ秋山にとっては、桐朋学園での恩師・齋藤秀雄との思い出の曲でもあるはず。それゆえこれは、あたかも彼が恩師から受け継いだ宝物を広響の楽員たちへの置き土産にしようという、心のこもった告別の辞であるかのように感じられたのだった。弦の透明で澄んだ音色の美しいこと。秋山ならではの正確で整然たる音楽だ。
 「クラリネット協奏曲」では、その端整なオーケストラに、最弱音を随所に駆使したオッテンザマーが表情豊かなソロで多彩さを織り込んだ。美しい演奏である。

 任期最後の定期を「英雄の生涯」で締めるとは、なかなか意味深長なものがある。「英雄の業績」と「英雄の引退」━━もちろん秋山さん自身が引退というわけではない━━はいいとして、「英雄の敵たち」と「英雄の戦い」という副題が、勝手な想像と可笑しみを生じさせる。ここでも秋山ならではのきっちりと組み立てられた演奏が印象的だ。

 だが、この大編成の管弦楽が、大音量で、しかも複雑な音の交錯を響かせるには、音の拡がりも余韻も余情もないこのホールは、いかにもつらい。完売満席で客席もぎっしりと埋まり、残響がいっそう吸われてしまった状態ではなおさらである。
 第1部の「英雄」の個所や、激しい「英雄の戦い」の個所では、音がどうしようもなく痩せてしまう。以前ここで聴いた彼らの演奏による「トゥーランガリラ交響曲」の時よりも、この後期ロマン派の豊麗な作品の場合は、更にそれが目立つ。
 先頃日本各地でオケを聴き歩いたフランスのメルランというジャーナリストが「フィガロ」に寄稿した一文の表現を借りれば「この広島交響楽団には、他の都市のオーケストラと同じように、もっと質の高いホールがあてがわれる資格がある」ということになろう。

 だが見方を変えれば、こんな音響のホールで、これだけまとまった演奏を響かせるのだから、たいしたものというべきかもしれない。事実、「英雄の伴侶」の後半や、「英雄の業績」以降終結にかけての叙情的な、息の長い曲想の部分は、ホールのアコースティックの欠陥を乗り越えて、極めて美しい響きで満たされていたのである。
 こうなると、良いホールでこの曲が演奏されれば、その輝かしさはいかばかりか、と思いが、いよいよ強くなる。

 今日は、この定期を最後に退団する奏者が、オーボエ、ホルン、打楽器に1人ずついて、いずれも大きな花束と、楽員と聴衆とから盛大な拍手が贈られていた。
 そしてもちろん、シェフのマエストロにはさらに大きな拍手と歓声と花束が贈られた。1階客席は半分以上がスタンディング・オヴェーションである。すべてのオーケストラのシェフが、退任に際してこのように温かく送り出されるとは限らない。広島の聴衆は温かい。

 携帯電話機のスイッチ・オフや、非常の場合における注意などを告げる陰アナ(内海雅子さん)は、前回聞いた時と同様に、今日も柔らかく温かい雰囲気のアナウンス。とても感じがいい。
 もう一つ、第1ヴァイオリンの3プルト目の内側に座っていた男性奏者はおそろしく熱狂的に、熱中的に派手な身振りで弾くのが目立って、苦笑させられる。私は奏者が「全身で弾く」姿を見るのは大いに好きなのだが、ただ彼の場合は、独りだけ並外れた規模の大暴れをしているので、少々違和感がないでもない。だがこれは欠点ではないから、あげつらう必要もない。

 終演後はホワイエで、聴衆が自由参加し、指揮者や団員たちを交え、慰労会が行われた。NHKのテレビ取材も入って、まあ賑やかなこと。こちらは舞台袖で秋山さんにお疲れさまを言ってねぎらい、称賛し、間もなくホールを出る。
 6時17分の「のぞみ」で帰京。

コメント

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第1VnのY.Kさんは決してK.Yさんなのではなく、音楽的感動力が非常に強く一種の広響名物ですので諦めてください(笑)
人格も認識も正常です。 http://ameblo.jp/violink/

Youtubeの広響チャンネルのアルゲリッチのと共演映像では、その奇妙に大きな存在感が邪魔になってしまっている感は否めませんが。

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