2017-03

2017・2・6(月)METライブ・ビューイング ヴェルディ:「ナブッコ」

    東劇  6時30分

 今年1月7日の上演ライヴ。ジェイムズ・レヴァインの指揮、エライジャ・モシンスキーの演出。
 主役歌手陣は、プラシド・ドミンゴ(ナブッコ)、リュドミラ・モナスティルスカ(アビガイッレ)、ディミトリ・ベロセルスキー(ザッカーリア)、ジェイミー・バートン(フェネーナ)、ラッセル・トーマス(イズマエーレ)。

 このプロダクションはおそらく、現在METで上演されているものの中では、最も古いものの一つではないか。
 ジョン・ネイピアの舞台装置こそ豪壮だが、合唱はほぼ全部にわたって「直立して客席を向き」だし、登場人物たちも演技というよりは曖昧な動作しかしていないという舞台で、すこぶる保守的なものである。要するに立派な舞台装置を使ったセミ・ステージ上演に近いものと言っていいだろう。

 私はどういうわけか、これをMETの現場で2回観ている。最初はプレミエのシーズンの2003年3月22日、次が2011年11月5日のことだった。
 特に2003年の時は、アメリカがイラク戦争を開始した3日後(NY時間)という、マンハッタンも穏やかならざる雰囲気に包まれているさなかのことだったのである。その時には、ナブッコ王率いるバビロニア軍が侵入して来るシーンで、巨大な戦闘用の「棒」が門をバリバリと破壊しながら突っ込んで来るという物凄い演出があって、折も折とて不気味な思いに駆られたものであった。

 だがその演出設定は、その後消えてしまい、ただナブッコが歩いて入って来るという、どうということもない演出に変えられてしまった。今回もそういう形である。いちいちぶっ壊していては修理が大変で、制作費がかかり過ぎるということなのか、それともあの棒が何か別のことを連想させるとかいうクレームでも出たのか?
 大詰近くの偶像破壊のシーンも、最初観た時にはもっと何かあったはずだと思うが、二度目に観た時も、今回も、何も行なわれていなかった。

 だが、もちろんヴェルディの音楽はいいし、レヴァインの指揮もいい。病から復帰したあとのレヴァインの音楽は、昔とは全く違って、一種ハートフルな温か味と、猛烈な熱気といったものを感じさせることは、既に書いたとおりである。

 それに今回は、ドミンゴの存在が大きい。バリトンのパートをテナーの音色で歌うという形である。声のパンチに不足しているのは仕方ないけれども、やはり巧い。零落した失意のナブッコと、それが正気を取り戻し、威厳を蘇らせた瞬間の歌と演技の表現などは、さすがの味があった。
 それにしても、70歳代半ばという年齢で、あれだけ歌えて演技が出来るのだから、全く驚異的である。

 その他の4人の主役たちが、揃いも揃って「偉大な体格」というのは、最近のオペラの舞台ではむしろ珍しいだろう。
 その中でも、アビガイッレ役のモナスティルスカは、強靭な声と馬力で、圧倒的な勢いだった。特に第2幕のあの有名なアリアで、ライヴの上演ではどの歌手ですら声の負担を避けてカットしてしまう個所をも、完全にノーカットで高らかに歌い切ったパワーは、もう見事というほかはなかった。

 休憩1回を含み、9時半少し過ぎ終映。

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