2017-02

2017・1・25(水)シルヴァン・カンブルラン指揮読売日本交響楽団

      サントリーホール  7時

 デュカスの「ラ・ペリ」、ドビュッシーの「夜想曲」(合唱は新国立劇場合唱団)、ショーソンの「交響曲変ロ長調」。
 カンブルランが読響のシェフである間に是非ともやってもらいたいと思っていた、奮い付きたくなるようなプログラムだ。コンサートマスターは長原幸太。

 舞踊詩「ラ・ペリ」は、冒頭のファンファーレだけはしばしば聴く機会があるが、その全曲(約20分弱)をコンサートで聴ける機会は、そう多くあるわけではない。
 この冒頭が半世紀前の時代、NHKが第1放送と第2放送を使って放送していた「立体音楽堂」という番組のテーマに使われていたことを覚えている人も、もう少ないだろう。2台のラジオを各々の波長に合わせ、左右に並べて立体(ステレオ)放送として聴く方法である。「一つの電波で二つの放送が聴けるFMマルチ・ステレオ」が未だ普及していなかった時代、あの「立体放送」がどんなにエキサイティングな音の世界だったか━━。
 そんな古い話はともかく、この日、読響の金管セクションが華やかに演奏したそのファンファーレは、すこぶる力感に富んだものだった。

 「夜想曲」では、読響のサウンドは一変し、弦にも柔かさが加わる。もう少し夢幻的な雰囲気が加われば文句ないのだが、当節の演奏はこういうものだろう。
 女声合唱は下手側のやや前方に位置していたので、その声が如何にも「合唱団」というイメージでリアルに響くのが、私の好みとはちょっと違う。

 この日の圧巻は、何といってもショーソンの交響曲だった。良い曲なのに、日本では滅多に演奏会で取り上げられないのが不思議である。
 ━━この曲の第3楽章の冒頭も、1950年代頃には、アメリカのニュース映画の中で、竜巻の災害の場面でよく使われていたものだった。これがまた、実によくそのシーンに合うのである。ちなみに、火災、地震、暴動などの場面で使われる音楽は、判で押したように、マーラーの「巨人」第4楽章の冒頭だった。当時は、そういう「ニュース映画」のBGMや、あるいはラジオの番組のテーマ音楽などの大半はクラシック音楽だったから、私たちはたとえ作曲家の名を知らなくても、そのようにしてショーソンやマーラーの音楽に触れる機会があったのである。

 さて、カンブルランはこの交響曲を、比較的暗い音色をあふれさせつつ、重厚な響きと、濃い陰翳を以って繰り広げて行った。私が昔愛聴したミュンシュ指揮ボストン響の演奏に比べると、別の曲のように音色が暗い。特に第1楽章主部は終始イン・テンポで進められるので、いっそう重厚な印象が強くなるだろう。
 だが、その陰翳が存分に威力を発揮したのは第2楽章であった。カンブルランと読響による数々の名演の中でも、この第2楽章での演奏は指折りの名演だったのではないか。瑞々しい豊潤さの一方、くぐもった翳りに覆われた、濃い霧の中から湧き上がって来るような音楽。しかも気品のある佇まい。この楽章が閉じられた時には、これは見事な演奏だったな、と心底から感動させられたのである。

 第2楽章の演奏があまりに素晴らしかったために、私の印象の中では第3楽章の影はちょっと薄くなってしまったが、その例の冒頭主題を、カンブルランと読響はやや抑制気味に響かせ、ミュンシュのように劇的効果を追うことなく、前楽章の暗い雰囲気を更に引き継いだような感じで演奏して行った。終結近く、雲間から光が差して来るように音楽が明るさを増して行くあたりでは、もう少し明快な音の色彩の変化が欲しいところではあったが、それは本番を2~3回繰り返すうちに実現する類のものであろう。
 とにかく、見事な演奏だったことは疑いない。
    音楽の友3月号 Concert Reviews

コメント

お疲れさまです。 思えば「ボレロ」や「新世界」のような超有名曲を最初に耳にしたのはテレビCMでしたし、「英雄の生涯」もそう。マイケル・ケイン主演の映画「アイランド」で英雄の主題が繰り返し使われていたのを聴いたのが最初でした。他にも挙げれば限りがない。 どうしても作曲者、タイトルが判明しないのが、今から25年程前、何のCMかは忘れましたが田園風景にクジラが空を泳いでいる印象的なCMで流れていた曲。女性のヴォカリーズが入っていて、もしかしたらクラシック音楽とは違うかもしれませんが、ご存じの方がいたら教えて下さい。

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