2017-09

2017・1・21(土)ピエタリ・インキネン指揮日本フィル ブルックナー8番

     サントリーホール  2時

 昨秋の「ジークフリート」と「神々の黄昏」の抜粋、そしてこのブルックナーの「8番」、あとに続くブラームス交響曲ツィクルス(4月)、そして「ラインの黄金」セミ・ステージ上演(5月)と、首席指揮者就任以降のインキネンのプログラミングには、日本フィルがこれまであまり手がけなかったような、独墺系ロマン派の大曲が並びはじめているのが興味深い。

 昨秋のワーグナーの時には速いテンポで押しまくったインキネンは、今回のブルックナーではかなりの遅いテンポで、重厚かつ綿密に音楽を構築した。作曲家や作品によりこのようにアプローチを大きく変えるのもインキネンの主義らしいが、その基準点(のようなもの)をどこに置いているのか、まだよくつかめないところがある。
 いずれにせよ、独墺系指揮者たちとはかなり異なったスタイルによるインキネンのロマン派ものだ。大いに期待をもって聴いて行きたいものである。

 今日の「8番」(ノーヴァク版)の演奏時間は、楽章間の1分足らずの休みも含め、89分程度だった(昨日の演奏では、もう少し長かったそうである)。だが、弛緩した演奏の個所など、ただの1小節とて無い。
 遅いテンポが印象づけられたのはもちろん第3楽章においてだが、イン・テンポでゆったりと進めつつも、粘った感を与えずに頂点へ盛り上げて行くインキネンと、それに応えた日本フィルの意欲的な演奏には、なかなかのものがあった。特に第3楽章終結における「彼岸的で永遠なるもの」への憧憬の個所での演奏は、見事といっていい。

 インキネンが日本フィルから引き出した音色は、清澄とは言えぬまでも、かなりの程度まで透明さを保っていただろう。
 そして、アンサンブルも均衡を重視し、ある楽器群を突出させるということは避けているようだ。演奏が攻撃的でも刺激的でもなく、明快さをもちながらも柔らかさを感じさせたのは、そのためかもしれない。

 特に彼は、トランペットやティンパニを戦闘的に響かせるということは、あまりやらない。トランペットはむしろ抑制気味で、それゆえ第2楽章のスケルツォ主題のあくなき反復個所(第49~52小節)や、第4楽章でのファンファーレ(第11~16小節あるいは687~696小節など)で、トランペットだけに託されたモティーフが強く前面に出て来ないことには、どうしても疑問を抑え切れなくなる。全曲最後の大頂点(第697小節以降)で複数の主題動機が一度に鳴り響く個所で、トランペットの受け持つ動機が他の動機と同等に主張されないところも、同様である。

 ティンパニのほうは、第4楽章冒頭では本来の力強さで活躍、また例のスペクタクルな【N】の個所では、かつてのミュンヘン・フィルの剛腕奏者ペーター・ザードロにちょっと似た雰囲気で叩きまくるさまが面白かった(このティンパニ奏者は以前から目立っているが、プログラムの楽員表には名前が出ていない)。

 ともあれ、日本フィルが新境地を開きつつあるという点でも、このブルックナーは興味深いものがあった。秋には、「5番」をやるそうである。今日のコンサートマスターは扇谷泰朋。

コメント

21日に聞きました。特に第三楽章では、ミューズの神が、降ってきたような、ぞくぞくした感動を覚えました。理事長さんに聞いたところ、例の打楽器奏者はボストンから来て、3月から正式団員になるそうです。
 

上品なブルックナー

インキネンンの貴公子を感じさせる風貌にも似て気品のある美しいブルックナーだったと思います。弦あくまでも美しく、管あくまでもノーブルで、と。ただ、ときに荒々しく金管を咆哮させ、バランスが崩れながらも無骨なまでに押し進むブルックナーもこれまたたまらなく好きという者にとってはややお上品過ぎて面白みに欠ける演奏でありました。
今の日本フィルはどちらを求められてもやってのけられる実力、水準に達してるからこそ思ってしまう贅沢な望みなんでしょうけれども・・・。

これから

20日の演奏を聴きました。東条先生は、概ね好意的で、確かに3楽章は良かったと思います。ただ、透明度は不十分で、手に余るような、あるいは、手が付いてないような部分が散見される。「シベリウス」でも何でもいいんだが、哲学が感じられないのが難。終楽章の締めがバラバラで、若干興をそいだ。

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