2017-05

2017・1・18(水)サイトウ・キネン・オーケストラ・ブラス・アンサンブル

      紀尾井ホール  7時

 小澤征爾監督下にある団体として、昨日の演奏会の続きのような錯覚をつい抱いてしまうが、昨日は水戸、今日は松本。

 サイトウ・キネン・オーケストラ・ブラス・アンサンブルという名称だが━━トランペットは、ガボール・タルコヴィ(ベルリン・フィル)、カール・ゾードル(グラーツ・フィル)、高橋敦(都響)、服部孝也(新日本フィル)。ホルンがラデク・バボラーク(元ベルリン・フィル他)、阿部麿(フリー)、勝俣泰(N響)。トロンボーンはワルター・フォーグルマイヤー(ウィーン響)と呉信一(元大阪フィル)。バス・トロンボーンがヨハン・シュトレッカー(ウィーン・フィル)、テューバがピーター・リンク(仙台フィル)。
 この11人の男たちに、打楽器の竹島悟史(N響)が加わったのが今回のアンサンブルだ。まさに錚々たる名手たちの集団である。

 とにかく、その巧いこと。どの曲一つとっても鮮やかな演奏なので、痛快そのものだ。音量のパワーも凄いから、もっと大きなホールでやってもらいたかったが・・・・。
 第1部がいわゆるクラシックのレパートリーで、ヘンデルの「王宮の花火の音楽」の序曲に始まり、プレトリウスの「テレプシコーレ舞曲集」抜粋、バッハ(シュテルツェル)の「御身がともにいるならば」、モーツァルトの「ホルン協奏曲第3番」第3楽章、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲(最初と最後を繋げたもの)、ミロシュ・ボクの「3つのイントラーダ」と続くプログラム。

 プレトリウスの舞曲など、あの伝説的なフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルのような、常時編成の団体のような溶け合った響きは求むべくもないが、各国の名奏者たちが集い、腕を競い合いつつアンサンブルをつくって楽しむというさまが、演奏に開放的なスリルを感じさせて素晴らしい。モーツァルトの協奏曲で、バボラークの颯爽たるソロを聴けたのも嬉しかった。

 第2部は、ポップス系のプログラムだ。ジョン・ウィリアムズの作品集、グレン・ミラーでおなじみの「イン・ザ・ムード」と「ムーンライト・セレナーデ」、それから「ロンドンデリーの歌」といった傾向のもの。更にアンコールとして、エルガーの「威風堂々第1番」、クリス・ヘイゼルの「三匹の猫」からの「ミスター・ジャムス」、ジョン・ウィリアムズの「レイダース・マーチ」の3曲が闊達に演奏された。
 こういうのを手がけても、彼らの演奏は実に鮮やかなものである。

 フォーグルマイヤーも巧かったが、それ以上に、高橋・服部のトランペット日本勢が「平気な顔で」燦然たる高音を吹きまくるのには感心させられたし、竹島悟史がクラシックからジャージーなスタイルまで、あらゆるパーカッションを見事にこなして八面六臂の大活躍を繰り広げたのにも舌を巻かされた。

 客席には小澤さんも座っていて、1曲終るごとにブラヴォーを叫んで、立ち上がって拍手を贈る。彼が客席に入って来ると、ホール全体から万雷の拍手が起こる。皇族並みの光景だ。彼が如何に愛されているかという証だろう。
 私も席が彼の真後ろだったのを幸い、首を伸ばして、昨日のミューザ川崎でのことを囁くと、「ああ、聴きに来てくれてたの? あのオーケストラ、いいでしょう!」と、忽ちいつものようにオケを誉めあげていた。ほんとに元気そうに見えましたよ、と言うと、「でもやっぱり、くたびれちゃった」と苦笑していたが、やはり今は「1曲だけ指揮」が精一杯なのだろうか?
 しかし今夜も小澤さんは、カーテンコールではメンバーから一度ならずステージに引っ張り上げられたりして、舞台と客席との間を元気に歩き回っていた。祝着である。
     モーストリー・クラシック4月号 公演Reviews

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