2017-10

2016・12・25(日)アヌ・タリ指揮東京フィル「第9」

      BUNKAMURAオーチャードホール  3時

 エストニアの美人指揮者、アヌ・タリが東京フィルハーモニー交響楽団に客演した「第9」。
 協演は小川里美、向野由美子、宮里直樹、上江隼人、東京オペラシンガーズ。コンサートマスターは三浦章宏。

 リズム感は明晰で、オーケストラをすっきりした音で響かせ、特にホルンやトランペットやティンパニを明快に強調して小気味よいダイナミズムを構築して行く。そのあたりはいいのだが、しかし前半は何とも坦々とした音楽づくりであり、これほど「なにげない」演奏の「第9」もないのではないかとさえ思わせた。

 ところが、第4楽章の「歓喜の主題」がオーケストラでふくれ上がって行く個所のあたりから、演奏の生気がみるみる壮んになりはじめ、それまでの速いテンポでたたみかける推進力も、本来の昂揚感を伴いつつ発揮されて行ったのである。最後の歓喜のクライマックスでは、それに相応しい盛り上がりも聴かれた。

 このアヌ・タリ、現代ものが鮮やかなことでは定評があるが、清澄な美しい音をつくることでも知られている。今回もこの第4楽章で、東京フィルから見事に澄んだ音色を引き出したのには感心させられた。これだけでもたいした才能に違いない。

 第1部には、エストニアの作曲家ヘイノ・エッレルの「夜明け」という作品が置かれていた。1918年に作曲された10分足らずの小品だが、シベリウスとドビュッシーとR・シュトラウスの━━すべてその同時代の作曲家である━━影響も聞かれる美しいロマンティックな作品である。
 この曲、終ったのかどうか判らぬ終わり方をした上に、タリがそれらしいジェスチュアをしないまま立っていたので、客の1人が拍手をしかけてすぐ止めるといった空気の裡に、客席は静まり返ったままだった。すると彼女がちょっと首を曲げて半身のまま客席を振り返り、「終ったんですけど?」という表情を見せたので、場内からは軽い笑とともに拍手が起こるという一幕もあった。

 終演は4時35分。

コメント

透明感

いつも拝読させて頂いております
22日のオペラシティを聴きました
会場の違いでしょうか、前半3つの楽章も非常に表情豊かと感じました
突きぬけるような透明感のある響きに驚嘆しました
あの何気ない(少々ぎこちない)指揮から、なぜあのような音楽が生まれるのか
不思議でならないです
マジックでしょうか

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