2019-05

7・31(木)ファビオ・ルイジ指揮PMFオーケストラ

  サントリーホール

 PMFの最終公演は、ほぼ例年通り、東京での演奏会で結ばれる。今年は首席指揮者のファビオ・ルイジが指揮した。彼は2010年からこの音楽祭の芸術監督に就任することになっている。

 前半に「ドン・キホーテ」。
 これだけ標題音楽的要素が意識されない、整然たる形式を持った絶対音楽として演奏の「ドン・キホーテ」も珍しいのではなかろうか。「羊」が鳴きながらたむろしている描写の場面など、この演奏では単に金管楽器群が特殊な奏法を行なう個所としての扱いでしかない。全体としては実に美しい演奏で、最強音も最弱音も、オーケストラのすべての音色とも完璧なほどに均整の取れた響きになっていたことは事実だが、その反面、非常に生真面目な、夢想味の少ない音楽になっていた。これがルイジのこの曲に対する本来の解釈なのか、それともアカデミー生のオーケストラ相手の演奏の手法なのかは、簡単に断じるのは早計だが。

 しかしルイジは、こういったアプローチを行なうことにより、どうやら後半のプログラム「幻想交響曲」との明確な対比を作ろうというのが狙いだったように感じられる。
 こちら「幻想」は、一転して激情的な演奏で、全体に速めのテンポに加え、スコアに指定されているよりも遥かに多くのアッチェルランドが施され、非常に振幅の大きい音楽が設計されていた。各楽章とも。頂点に向かう個所でみるみるテンポを速め、感情を高めていくあたりは、すこぶるスリリングなものであった。第1楽章(夢と情熱)での後半の興奮など、まさに主人公の激情の高まりそのものだろう。
 とはいえ、第2楽章(舞踏会)は極めて流麗軽快なワルツ一色になっていて、主人公の嫉妬のジレンマなどは露ほどにも感じられない。結局ルイジは、この作品でも標題音楽的要素にはさほどこだわらず、純粋に音楽としての流れの上から、昂揚や沈潜、デュナミークの対比といったものを導き出しているように思われる。

 オーケストラは、今年も水準は高い。18型の弦楽器群は強力で、しなやかで瑞々しい魅力的な音色を聴かせていた。ただ、「ドン・キホーテ」の中でソロを弾くコンサートマスターの音が不思議にか細く弱く、さっぱり聞こえなかったのが惜しい。この若者は、ステージではもっと覇気を見せ、オーケストラはオレが引っ張るのだと言わんばかりの迫力を体で表わすことが必要だろう。
 木管の中では、第1オーボエを吹いた女性奏者が光った。金管群は、今回は音量が比較的抑制されていたようである。
 なお「ドン・キホーテ」のチェロのソロは、シュターツカペレ・ドレスデンの首席ヤン・フォーグラー。若いが、風格と迫力充分だ。

 拍手は熱烈。2階ではアカデミー生のアメリカ人の友人でもいるのか、口笛が盛んに吹き鳴らされていた。この口笛はうるさくて大嫌いである。傍でやられたらたまったものじゃない。

   東京新聞(8月9日)演奏会評  
   北海道新聞
   

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