2017-09

2016・12・13(火)カエターニ指揮読響&ポゴレリッチ

   サントリーホール  7時

 読響の定期演奏会ではあるけれど、イーヴォ・ポゴレリッチが客演ソリストとしてラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」を弾く、というのがやはり話題の中心だろう。
 あの超個性的な「わが道を往く」ピアニストであるポゴレリッチがコンチェルトを演奏すれば、また天下の奇演・奇観になるのではないかという期待(?)が、どうしても湧いて来てしまう。

 彼が先年(2010年4月28日)、デュトワ&フィラデルフィア管と東京で協演、ショパンの「2番」で、指揮者とオケを無視するがごとき演奏を悠々と展開した時の━━演奏終了後の拍手に応えてポゴレリッチがいくら誘っても、デュトワは一切応じずに「いや、どうぞどうぞ、貴殿おひとりでどうぞ」という身振りをしたまま知らん顔をして指揮台に立っていたこと、楽員たちもコンマスら2,3人を除いてポゴレリッチに拍手もせず、ソッポを向いたまま座っていたこと、などの光景は、未だに記憶に新しい。
 さて今回はどうなるか、と。

 そのポゴレリッチ、冒頭のソロは意外に普通のテンポでスタートしたが、その和音が3つ目あたりから早くも暗い翳りを帯び、凶暴なほどの激しい表情に変わり始めたのには慄然とさせられた。
 この曲がいくら豪壮な力強さを備えているといっても、このポゴレリッチの演奏ほど、悪魔的な物凄さを感じさせたものはない。

 ほぼ全曲がこの調子であった。その度外れた強靱さには、聴いているこちらの精神が威嚇され、鞭打たれるような思いにさえなって来る。
 しかしそれでも、第2楽章の終結の個所や、第3楽章の大詰めなどにおける暗い和音の、毅然たる剛直な響きは、圧倒的な力に満ち、襟を正す思いにさせてしまう。実に不思議な演奏だ。つまり、たじろがされるけれども、やはり凄い、と思わせる演奏なのである。

 ポゴレリッチは、作曲者ラフマニノフ本人でさえ想像しなかったイメージで、この曲を演奏したのだった。この大胆不敵で、作曲者をも畏れぬ感性は、激しく攻撃されて然るべきだが、しかし、それと同じ数の称賛を受けても然るべきだと思う。
 アンコールには第2楽章が演奏されたが、この時は少し落ち着いた演奏という印象を受けたのは、あるいはこちらの受容の気分が、彼の世界に少し慣れたせいなのかもしれぬ。

 それにしても、客演指揮者のオレグ・カエターニは、このコンチェルトでは、読響を異様なほどにガンガン鳴らし過ぎた。少なくとも、RC席で聴いていると、そう感じられた。これは指揮者の意向か、それともポゴレリッチの注文によるものか?

 以上は第2部での演奏である。第1部もロシア・プロだったが、こちらはカエターニの猛烈なエネルギーを持った指揮が生きていた。
 ムソルグスキーのオペラ「ホヴァーンシチナ」からの「ペルシャの女奴隷の踊り」は、さほどのインパクトはない曲だから━━「前奏曲《モスクワ河の夜明け》」をやってもらった方がずっとよかったのに━━どうということはないが、次のボロディンの「交響曲第2番」のほうは、聴き応えがあった。粗暴なほどに荒々しいタッチながら、この曲の野性的な力強さがよく再現されていた。ここでの読響は力感たっぷり。コンサートマスターは小森谷巧。

コメント

若き奇才は今なお奇才

ごくまれに、演奏が始まった時点で「きょうはただならぬ演奏に立ち会うことになりそうだ」というゾクっとした感覚を覚えることがありますが、この日はまさにそのような感覚が広がり、特に2楽章からはその思いを強くしました。背筋がザワザワ、目頭がシュワシュワ・・・2楽章最後の音の消えるまでの窒息しそうなまでのあの深い静寂。一つの音楽体験として貴重な思い出になりました。若き奇才は壮年期を過ぎてもなお奇才でした(同じ年代の私が年を経るごとに凡才の度合いを深めているのに・・・)。
蛇足ながら、まったくもって同感です。何故、ここまでオケを鳴らしてピアノを掻き消す必要があるのか、と何度も思うことがありました。また、アンコールは明らかにテンポが早くなり流れるようになったと思います。もう一度さっきの演奏を再現してほしいなと思って聴いてました。でも、それは受容のため?・・・すごいご指摘です。

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