2017-11

2016・12・11(日)ノット指揮東京交響楽団 「コジ・ファン・トゥッテ」

     東京芸術劇場 コンサートホール  3時

 ジョナサン・ノットのモーツァルトのオペラはいいだろうと思っていたが、予想通り。
 引き締まって歯切れのいい速めのテンポで、小気味よく進む指揮である。
 ある傾向の人々がやるような、ことさらテンポをいじって矯めをつくるような小細工など弄しないのがいい。

 序曲が非常に速いテンポで演奏されたのに続き、そのテンポに乗ってアレック・シュレイダー(士官フェルランド)、マルクス・ヴェルバ(士官グリエルモ)、トマス・アレン(老哲学者ドン・アルフォンソ)が歌い出す3重唱の、なんと爽快なこと。息もつかせぬ快速で歌われて行く第1場の3つの3重唱とレチタティーヴォに心身を委ねていると、その快さに、風邪などどこかへ飛んでしまう。

 特に、マルクス・ヴェルバのナマが聴けたのは嬉しい。彼の歌唱も演技も、実によく決まっている。トマス・アレンは久しぶりに聴いたが、往年の馬力はもう望むべくもないものの、この老哲学者役としてはそれなりに風格も味も出て、文句のないステージであったろう。

 今回はそのトマス・アレンが舞台監督も受け持ち、ステージ前方で演技を行わせながら進行させるという上演だった。特別な衣装も小道具もない舞台ながらも、各役柄の表情は実に生き生きとして雄弁だ。ドラマに必要なものは、これだけで全てそろっている、と言ってもいい舞台であった。

 女声陣も、もちろん手堅く達者だ。私としては、フィオルディリージに最初予定されていたミア・パーションが聴けなかったのは残念だったが、代わりに登場したヴィクトリヤ・カミンスカイテも輝かしく歌っていた。マイテ・ボーモン(妹ドラベッラ)、ヴァレンティナ・ファルカス(女中デスピーナ)も闊達な歌唱と演技で、特にファルカスのデスピーナは愛らしい。
 なお合唱は新国立劇場合唱団。アルフォンソに雇われてインチキ芝居に一役買ったという設定の「人々」の雰囲気をそれなりに出していただろう。

 ノットと東響は、モーツァルトの魅力を充分に再現する躍動的な快演。
 ただ、そのノットの指揮だが━━前述のとおり快調であることは疑いのないことなのだが、ずっと聴いていると、もう少し音楽に色合いの変化というか、登場人物の心理の変化に即したニュアンスの変化が、演奏にだんだん欲しくなって来る。
 ただしこれは、デュナミークやテンポをもっと変化させればいいという意味ではない。そういう小細工をせずとも音楽に表情の変化を生れさせる芸の幅━━それを彼が持つようになる時期を待つことにしよう。
 6時40分終演。

コメント

モーツァルト演奏

>ずっと聴いていると、もう少し音楽に色合いの変化というか、登場人物の心理の変化に即したニュアンスの変化が、演奏にだんだん欲しくなって来る。

音楽自体がモーツァルトの傑作中の傑作。その音楽の素晴らしさは味わえたものの、やや一本調子な感じが私もしました。
まあ変な小細工をやると忽ち音楽の美しさは曇ってくる…。モーツァルトは、簡単に演奏は出来るが、良い演奏をするのは難しいと言う所以なのでしょう。
私にはサバリッシュやムーティによる幸福な音楽体験が今も忘れられません。残念ながらベームは生では聞けませんでしたが。

ご無沙汰しております。小生も東京芸術劇場で拝聴いたしました。歌手、指揮、オケいずれも素晴らしく、とてもレベルの高い公演に大満足して帰途につきました。

あえて粗探しをするなら、フィオルディリージとドラベッラの声質が小生のイメージとはちょっと合わなかったこと(すぐに浮気するドラベッラの方がメゾ(情熱的なタイプ)、最後まで悩むフィオルディリージがソプラノ(清楚なタイプ)というのが小生のイメージでありまして(笑)、その意味において、どちらかと言えば、カミンスカイテに(素晴らしい歌唱でしたが)フィオルディリージを歌ってほしかった)、フェルランドが少し線が細かったこと、デスピーナの演技(所作)が少し固いように思えたこと(歌はよかった)などが少し気になったものの(一か所、ドン・アルフォンソが出を間違えたところもあったように思いますが)、いずれも大したキズではなく(というか、良し悪しというより好き嫌いのレベルの問題でありまして)、全体を通じて極めて高い水準のアンサンブルオペラを堪能させていただきました。

このオペラを聴きながら思ったのが、まず最近のオペラ歌手は、一様に完成された発声テクニックを見事に修得しているということ。少し前までは発声法は未熟だけど(したがって、音域によって音色が変わり、声の均質性に欠けるが)、それを声の良さや独特な感情移入表現によってカバーしている人気歌手がいたように思うのですが、最近はそういう歌手は見かけなくなり、みんな実に音程が正確で歌唱が安定しているなぁと思いました(半面、全体的にスケールが小さくなっている面もあるのかもしれませんが)。

そして、次に思ったのは、ジョナサン・ノットという指揮者の凄さ。小生は東響の定期会員でありますゆえ、彼の指揮するコンサートには、殆どすべて通っていますが、正直言って、これはちょっと・・という外れが全くないように思うのです。常に真摯に音楽に向き合い、オケ(とソリスト、合唱団)から最高のパフォーマンスを引き出す(潜在的な能力を最大限に発揮させる)という点において、ノットは極めて高い技術を有する指揮者であり、そのような彼の演奏を簡単に聴くことができる日本の音楽ファンって、ひょっとしてものすごく恵まれているのかも、と思ってしまいました。

閑話休題、いよいよ12月も半ばに入り、コンサート模様は、第九、クリスマスコンサート、ジルベスターという方面にシフトしておりますが、今年の第九では、中村恵理さんが登場する新日本フィル、アヌ・タリが登場する東京フィル、そして、御年89歳のブロムシュテットの登場するN響を楽しみにしております。ちょっと早いですが、2017年という年が皆さまにとって素晴らしい年となりますように。

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