2017-10

2016・12・10(土)広上淳一指揮東京シティ・フィルハーモニック

     東京オペラシティ コンサートホール  2時

 大阪から早朝の新幹線で帰京。まだ咳が残るのだが、マスクをしてホールに出かける。演奏中に咳を堪えるこの辛さは、本人でないと解らない。危ない時には、フォルティッシモをひたすら必死に待ちわびるということになる。ピアノのリサイタルだったら、行くのを止めなければならぬ。

 広上淳一が客演指揮。ベルリオーズの序曲「海賊」と交響曲「イタリアのハロルド」、およびその2曲の間にプーランクのバレエ組曲「牝鹿」(めじか)を置くという洒落たプログラムである。「ハロルド」のソロは川本嘉子、コンサートマスターは松野弘明。

 チラシにはたしか「ベルリオーズの失恋劇場その2、男の刹那な最期」とかいう、解ったような解らないようなキャッチがついていたはずだが、とにかくこれは先月定期の下野竜也指揮の「幻想交響曲」に続く「失恋劇場」第2弾であり、ベルリオーズ・ツィクルスとしては9月の高関健指揮による「ファウストの劫罰」に続く第3回ということになる。

 この広上・下野・高関の3マエストロが、いずれも京都市響の重鎮━━それぞれ京都市響の常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー、常任客演指揮者、常任首席客演指揮者というポストに在る人たちであることが面白い(3本の矢、と言っているんだって?)。
 とにかく、この3回とも掛け値なしの見事な演奏で、もっと多くの人が来て聴いてあげて欲しかったと思うのだが・・・・。

 広上淳一が振ると、オーケストラが躍動し、スウィングする。「海賊」のコーダなど、音楽の昂揚とともに、舞台全体が沸き立っているような感があった。オケが燃えている時でも、ぴりぴりとした雰囲気でなく、楽員たちが音楽を愉しんでいる、という雰囲気が客席に伝わって来るのである。
 こういう指揮者は、稀有の存在だろう。京都市交響楽団をあの水準まで引き上げた実績は驚異的だし、今やそれが彼の絶対の自信の基となっているのではないだろうか? 

 「牝鹿」はやや正面切ったシリアスな表情の演奏で、少し重くもあったが、シンフォニックな良さもあり、こちらも楽しく聴けた。
 そして「イタリアのハロルド」では、オケが派手に炸裂、豊麗かつ色彩的なサウンドで、胸のすくような演奏を聴かせてくれた。アンサンブルも、管のソリも快調だし、音のスケール感も重量感も充分、何より音楽が燃えたぎっているのがいい。シティ・フィル、このところ確かに好調である。

 ハロルド役を象徴するヴィオラ・ソロの川本嘉子もふくよかな演奏を繰り広げたが、ベルリオーズの責任で出番のなくなった第4楽章後半では、椅子にかけてみんなの演奏を聴くという段取り。それでも最後にソロに復帰したあとは、そのままオケと盛り上がり、ついに一緒にエンディングまで弾いてしまった。
 前回、どこかで彼女がこれを弾いた時にも、やはり最後までオケと一緒に弾いていたので、「死んだはずのハロルドが山賊になって大騒ぎじゃ、ストーリー的におかしいじゃない?」とご本人に突っ込んだところ、「どうしても最後まで一緒に弾きたくなっちゃうのよ」と宣うておられたが、今回も楽屋を訪ね、その話で大笑いした次第。

 真摯で、いい演奏だった。しかし、この客の入りでは、いくら何でもちょっと可哀想だ。みなさん、何とか聴いてあげて下さい。
       音楽の友2月号 Concert Reviews

コメント

お疲れ様です。集客絡みなら、やっぱり話題性のあるものを提供しないと。プレコンサートで名演を聴かせた弦楽五重奏による「真田丸」。その絡みで言えば、三浦文彰登場の回のサイン会は、長蛇の列だった。若手絡みなら、副指揮者の抜擢もあっていい。音コン上位者の招聘も当然検討されるべき。我がコンマスのお嬢さんも。今のは、聴き込んだ者が、ちょっと面白いかなと思える物となっている。これは、少し変えないと。

最初のくだりについて

お疲れさまです。 大変失礼ながら、以下生意気をお許し下さい。 影響力のある東条さんの御発言です。 “フォルテッシモであれば咳をしても構わないのか” と安易に考える輩が増えるのでは? と危惧しております。 たとえフォルテッシモであっても咳をすれば近所の客の耳には入りますよ。“次は、あの箇所で咳をされるのか?” と常に気にしながら聴くハメになれば、それは咳を我慢する本人より辛いことです(咳が出るのは、あくまでも自己都合)。気になる、ならないは個人差があると思いますが、音楽を知れば知る程、楽譜の細かい部分まで聞き取りたくなるものです。 私なら楽章間にでも他の空いてる席に移動してしまいますが、それが出来ない人の方が大半でしょう。 ピアノ等のリサイタルに限らず体調が悪い時は、コンサートを諦めるくらいの覚悟が必要ではないでしょうか?(それ以前に日々の自己管理が大切なのは言うまでもないが) 自分も辛いし他人にも迷惑が掛かります。 勿論、仕事として聴かれている事情がある方の場合は仕方ない事もあるというのは理解できますが。         [最後のくだりについて] シティ・フィルは、かつて尾高指揮/エルガー:「1番」以来聴いていません・・・(来年、再び藤岡指揮で演奏されるようですので久しぶりに行こうかな。大好きな曲でして・・・)。アッテルベリ:交響曲第3番「西海岸の風景」が演奏されるなら絶対行きます!!(日本では、まだ演奏されていないのでは?)  比較的プログラムが保守的なN響あたりに対抗するなら、マニアック路線で攻めるのが一番でしょう。

シティ・フィル

いつも拝読しております。
ベルリオーズ三連発全て聴きました。かなり高水準の演奏だったと思います。以前に比べて、金管が良くなった様にも思いました。
比べては申し訳ない気もしますが、この頃、集中力に欠ける演奏の多い、新日本フィルより遥かに充実しています。(6日の公演も個人的には、全然だめだったと感じています。)
客入りに関して、この秋は海外の来日オーケストラも含めて、どこの会場に行っても惨憺たる状況からすると、健闘していた様にも見受けました。

ショー・K様

人様のブログで水掛け論も宜しからざると思いましたものの、余計なコメントをお赦し下さいませ

>私なら楽章間にでも他の空いてる席に移動してしまいますが、それが出来ない人の方が大半でしょう。

出来ないのではなく、しないのです。
ご自分の都合で移動する、して良い、ととれる様なご発言は如何なものでしょうか。
どうしても移動したいのであれば、主催者に申し出て、振り替えの座席券を得るなどするのが良識かと存じます。

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