2017-05

2016・12・5(月)パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィル

      東京オペラシティ コンサートホール 7時

 ドイツ・カンマーフィル・ブレーメン(ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団)の今回の日本ツアーは8公演で、今夜が最終日。ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」、ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」(ソロは樫本大進)、シューマンの「交響曲第3番《ライン》」

 パーヴォ・ヤルヴィは、やはり大編成のオーケストラよりも、こういうドイツ・カンマーフィルのような中規模の、それも斬新な感覚で沸き立っている「ヒッピー楽団」(4年前のパーヴォの発言、朝日新聞から)を指揮する時の方が、はるかにいい。骨の髄まで彼らしい、大胆不敵な、急進的でラディカルな個性が、存分に発揮できる。

 その最たるものは、今日のプログラムの中では、シューマンの交響曲「ライン」における演奏だ。これは4年前の来日の際にも「シューマン交響曲ツィクルス」の一環として演奏したことがあるけれど、これほどスリリングで面白い《ライン》の演奏は他に例を見ない。
 一つ一つの音符が、あらゆるフレーズが、際立ち毛羽立ち、鋭角的で闘争的な形になる。全曲にわたって予想外のリズム処理が為され、思いがけぬパートが浮き彫りにされる。聴き慣れたこの交響曲が全く違った様相で立ち現れて来る。

 シューマンはオーケストレーションが不器用だ━━などという古来の先入観など何処へやら、むしろ前衛的で斬新極まりない管弦楽法のイメージを以って響きわたるのである。快速テンポで、ほとんどの楽章をアタッカで有機的に接続し、緊迫感を保ち続けて指揮して行くパーヴォの気魄も見事だし、それに応えるオーケストラも巧い。実に荒々しく激しい、しかし痛快極まる「ライン」であった。

 「ハイドンの主題による変奏曲」にしても同様である。冒頭の管楽器による古式ゆかしいコラールが、骨太で強面に響きはじめる瞬間から、今日の演奏が何か並みのものとは違うものになりそうだという、不思議な期待感を持たせてくれる。コンサートに行って、最初からこういう感覚に浸れる時は、幸せである。そして、パーヴォとドイツ・カンマ―の実際の演奏は、その期待通りになるのである。

 ベートーヴェンの協奏曲でも、オーケストラの沸騰するようなエネルギーが、この曲をドラマティックな様相に仕立て上げる。樫本大進のソロは、コンサートマスターのポストにあるヴァイオリニストらしく、整然としたものだが、それでも今日は、精一杯の自由さを志向した演奏だったと言えようか。それがパーヴォとオケの激しい波浪のような演奏と、微妙なバランスを以って対峙する。

 オーケストラのアンコールは、ブラームスの「ハンガリー舞曲」からの「第3番」と「第1番」。これまた、曲をデフォルメ寸前にまで追い込むユニークな演奏である。
       ⇒音楽の友2月号 Concert Reviews

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