2017-03

2016・10・27(木)トゥガン・ソヒエフ指揮NHK交響楽団

      サントリーホール  7時

 ソヒエフとN響は、すっかり「親密な関係」になったようである。今年1月にも客演したばかりだったし、来年11月にも来る予定だそうだ。

 今回はB定期2回公演の指揮のみで、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第3番」(ピアノはエリーザベト・レオンスカヤ)と、ドヴォルジャークの「新世界交響曲」。
 指揮者とオケと、どちらの希望かは判らないけれども、名曲ばかりである。コンサートマスターは篠崎史紀。

 RB席前方という、オケの至近距離の席だったために、腕のいいN響の演奏の細部がよく聴き取れて、ソヒエフの音づくりの特徴が愉しめた。
 トゥールーズのオケなどを振る時と違い、N響を振る時には、彼の指揮はむしろストレートな表現になる。だがその細部のニュアンスは、実に精妙だ。「新世界」の第3楽章などでチェロがすっと浮かび上がり、また下行する個所での、短いが美しい表情の見事さ。

 第1楽章再現部の最初の方でオーボエが主題を奏する下に、ヴィオラがまず4分音符で、次にすぐ8分音符で、トレモロのまま不思議な細かい動きをする個所があるが、このヴィオラを明確に浮き立たせ、瞬時ながら音楽に変化をもたせた演奏は、久しぶりに聴いた。ソヒエフはここでヴィオラの方を向いてちょっと合図をしていたようだったから、明らかに意図的なものだったのであろう。
 第1楽章終結での力感も、凄まじい。
 このように、細かく神経を行き届かせた表現が随所に散りばめられている。こういう指揮者の手にかかると、聞き慣れた「新世界」が、非常に新鮮に感じられるのである。

 協奏曲の方では、レオンスカヤの武骨なピアノに合わせてか、ソヒエフは非常に重々しい音楽をN響から引き出した。
 レオンスカヤの演奏には昔ほどの切れ味は残念ながらもうないようだが、この「第3番」がこれほど陰翳の濃い、むしろ暗いほどの渋みをもった曲として聞こえたのは、初めての体験である。ソロ・アンコールで弾いたベートーヴェンのソナタ「テンペスト」のフィナーレも同様、流麗な力感の代わりに、不思議な「訥弁の滋味」といった印象が生まれていたのだった。

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