2019-08

7・23(水)パリ国立オペラ/デュカス:「アリアーヌと青ひげ」

  オーチャードホール

 下世話に言えば、1人の男の6人の妻の間に生じた奇妙な絆の物語?
 しかし、ドラマの心理的解釈の面では、バルトークの「青ひげ公の城」より多彩で複雑なものがあるかもしれない。特に「妻」たち6人の心の動きという点でも。
 リーダー的存在だったアリアーヌが去ると、連帯感のようなものは脆くも崩れ、女たちは元の木阿弥、無気力な逼塞状態に戻る。だが、一番バカを見るのはやはり、自分も無力な男と化してしまった青ひげだろう。

 ドラマは後半にいたって少々冗長な進行になるが、にもかかわらずデュカスの音楽は最初から最後まで豊麗な音色に彩られ、時に不気味な、時に官能的な響きで緊張の高まる瞬間もある。
 パリ国立オペラ管弦楽団は――小耳に挟んだ話では――「こんなお粗末なオケ・ピットで演奏できるか」と文句タラタラだったとのことだが、それでいながらこれほど重厚で豪壮で、かつ煌びやかな演奏を聴かせるのだから立派なものだ。このホールでオペラをよくやる日本の某オーケストラの貧相な音に甘んじているわれわれからすれば、もう御の字である。

 今回の指揮のシルヴァン・カンブルランは、もともとオーケストラを轟々と鳴らす癖のある人で、今日も歌唱の一部が消される傾向もあったが(聴いた席は2階下手側バルコン後方)、しかしこの曲をこれだけ色彩的かつ劇的に聴かせるのは、やはりたいした手腕というべきであろう。
 歌手で光ったのは言うまでもなく、ほとんど出ずっぱりで力唱を聴かせたデボラ・ポラスキ。この歌唱量と、このオケの音量とを乗り切るには、ブリュンヒルデ級の戦艦のごとき馬力がないと務まるまい。青ひげ役はウィラード・ホワイトだが、この役は、歌唱面での出番がほんの少ししかないという不思議な主役。

 演出・美術・衣装は、アンナ・ヴィーブロックが担当していた。彼女得意の「蛍光灯」と「室内設定」がここにも顔を見せている。ドラマトゥルギーはマルト・ウベナフで、ヴィーブロックとのどちらが主導権を取っていたのかは定かでないが、まずは手堅い出来。

コメント

6/19に兵庫県立でアリアーヌを見ました

東條先生、お久しぶりです。先生のブログはいつも拝見しております。先生は御仕事とは言いながら日本中、世界中を駆け回っておられますね。ウラヤマシイ!!   ところでこの「アリアーヌと青ひげ」は初めて観ましたが、良いオペラですね。音楽も申し分ない。演出も古色蒼然とした演出ではなく、ある程度モダンな演出が気に入りました。ただこの演出がパリでブーイングが出たと聞いておりますが、何故でしょうか。それともう一つ。この題名は「アリアーヌと青ひげ」になっておりますが、先生もご指摘のとおり青ひげは殆ど出番がなく、題名としては「アリアーヌと青ひげが愛した女たち」の方が適していると思います。

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