2017-05

2016・10・14(金)上岡敏之指揮新日本フィルハーモニー交響楽団

       すみだトリフォニーホール  2時

 午前中に仙台から帰京、その足で錦糸町へ向かう。こちらは、今シーズンから始まった「アフタヌーン コンサート・シリーズ」第1回(2日公演)の初日。
 音楽監督の上岡敏之が指揮するベートーヴェン・プロで、「コリオラン」序曲、「ヴァイオリン協奏曲」(ソロは崔文洙)、「第5交響曲《運命》」。アンコールだけは何故かモーツァルトで、「フィガロの結婚」序曲。

 マチネーの所為か、オーケストラには定期の時と違い、やや解放的な雰囲気が感じられなくもないが、それでも上岡独特の個性的な音づくりは、前回の演奏よりもさらに強く現れ始めている。ベートーヴェンの作品だから、それが目立って聞こえるのかもしれない。

 たとえば「コリオラン」冒頭では、弦のフォルティッシモを強いアタックで開始せず、滑り込むように開始したり、「5番」冒頭では「運命」のモティーフの最初のフェルマータを短く、二度目のそれを長めにしてフェイドアウト気味にし、それとクロス気味に6小節目の8分音符を発進させたりと、細かく神経を行き届かせる。
 内声部の扱いに凝った趣向が聴かれるのも彼の指揮の特徴の一つだが、今日もいくつかの個所でそれらを明確に響かせ、作品の構築性を強く印象づける演奏も聴かせていた。

 彼のフォルティッシモは、まっすぐな音でストレートに爆発することが、ほとんどない。しかも、響きにも常にくぐもった音色が使用されるので、「コリオラン」にせよ「5番」にせよ、全体に抑圧されたような、不安な緊張を漂わせる音楽になる。
 こういった上岡の音楽の特徴に、新日本フィルもだんだん染まって来たようである。

 「ヴァイオリン協奏曲」では崔文洙がソリストとなったが、これは実にユニークな演奏だった。そこでの崔文洙の音色と表情は極度に濃厚であり、したがって彼のソロが上岡の指揮する粘着した表情のオーケストラに、まるでじっとりと絡みついて行くようなイメージを感じさせてしまったのである。さながらインティメートな会話を交わすかのような、こんな粘ったベートーヴェンの協奏曲の演奏もあり得るのかと驚いた。これは、もしかしたら指揮者とソリストが肝胆相照らす親友同士であるがゆえに生まれた演奏なのかもしれない。
 ただ私の好みから言えば、こういうタイプのベートーヴェンの演奏は、どうもあまり居心地がよろしくない。

 そのあとのソロ・アンコールで崔文洙が弾いたバッハ(「無伴奏ソナタ第1番」からの「アダージョ」)も同様に、かなり濃厚で思い入れたっぷりの演奏だった。それにしても、彼はいつからこういう演奏スタイルになったのかしらん。

 コンサートの前半2曲では、西江辰郎がコンマスを務めた。最近の新日本フィルの演奏会で、上岡の指揮の時に崔文洙以外のコンマスがトップに座ったのを聴いたのは初めてである。だが「5番」では、また崔がトップに復帰していた。

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