2017-10

2016・10・13(木)山田和樹指揮仙台フィル 「カルミナ・ブラーナ」

       東京エレクトロンホール宮城  7時

 東京での武満徹のコンサート(オペラシティ)も聴きたかったが、今回は仙台フィルハーモニー管弦楽団の特別演奏会を取材に行く。
 ミュージック・パートナーの山田和樹が指揮、安井陽子(ソプラノ)、松原友(テノール)、小森輝彦(バリトン)、仙台フィル「カルミナ・ブラーナ」合唱団、NHK仙台少年少女合唱隊が協演。コンサートマスターは神谷未穂。

 プログラムは、サン=サーンスの「サムソンとダリラ」の「バッカナール」、コープランドの「エル・サロン・メヒコ」、オルフの「カルミナ・ブラーナ」。
 マエストロの表現によれば、この日のテーマは「踊り」もしくは「酔う」であるとのこと。なるほど、この3曲には酒宴・祝宴の要素があるし、また「カルミナ・ブラーナ」のあのリズムを一種のダンスと解釈し、しかも彼がこの曲を実際に「舞踊」のイメージで聴かせたことを思えば、辻褄はすべて合う。

 そのメイン・プロの「カルミナ・ブラーナ」は、速めのテンポで煽りに煽った、エネルギッシュでワイルドな演奏となった。
 その速いテンポにオーケストラや合唱がついて行けない時もあり、リズム感が曖昧になって音符の明晰さを失わせるところもあった。また、過度に強調された打楽器群が、他のパートをマスクしてしまう個所もいくつかあった。だが、そのリズムの躍動感と昂揚感と、歌詞の内容に応じて「羽目を外した」娯楽性などにより、闊達で楽しめる演奏になっていたことは確かであろう。

 第2部の酒場の場面でのバリトン・ソロや、「丸焼きにされた白鳥」のテノール・ソロはもちろん、オーケストラと合唱のパートにも、コミカルな味が存分に取り入れられた。時に誇張めいたところもなくはなかったが、これだけ徹底して酔いどれぶりを表現し、エロティックな揶揄を強調した演奏は稀であろう。堅物の指揮者だったら、ここまではやるまい。
 山田和樹がこの曲を指揮するのは、「演奏会としては」これが初めてだというが、何でも試みてみようという怖いもの知らずの姿勢は若い音楽家として貴重であり、それは大いに応援したいところである。

 少年少女合唱団は下手側舞台袖に並んでいた。
 メインの合唱は、4分の3が女声という変則的な編成である。前半は、男声は上手側にまとめて配置されていたが、男女の愛の歓喜が歌われる第3部では、女声が前列グループに、男声が最後列に並び替えられた。
 そして、「愉しい季節」のくだりでは、全員が楽しそうに体をリズミカルに動かしながら歌うという演出が取り入れられていた。曲想と、歌詞の内容からして、これは全く当を得た解釈であり、面白い試みである。以前、老大家ヴィンシャーマンがバッハの「ロ短調ミサ」を大阪で指揮した時、「グローリア」のある個所で合唱団員に楽譜を揺らせつつ歌わせ、人々が喜びに躍っているようなイメージをつくり出していたのを思い出す。

 全曲の大詰め個所は、まさに総力を挙げての盛り上げ。このあたりの山田の「もって行き方」は、相変わらず巧い。

 仙台フィルは、今年4月のパスカル・ヴェロ指揮のベルリオーズ(東京公演)が超絶的な出来だったので、このオケもいよいよ日本屈指の存在に成長したかとあの時はうれしくなったものだが、今日の前半の「バッカナール」や「エル・サロン・メヒコ」でのアンサンブルや管のソロなどを聴くと、その賛辞もちょっと割引しなければならないかもしれない・・・・。まあ今日の山田和樹が、細部の仕上げよりも「愉悦の祭典の熱狂」で盛り上げたためにこうなった、ということもあろうが・・・・。
     音楽の友12月号 演奏会評

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