2017-05

2016・10・11(火)ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団

      東京文化会館大ホール  7時

 ワレリー・ゲルギエフが、マリインスキー・オペラを率いて来日、オペラの他にも、いくつかの演奏会を行なっている。今日のは演奏会で、都民劇場音楽サークルの定期公演。

 通常の反響板を取り去り、奥の壁面一杯に、本拠マリインスキー劇場の緞帳と同じようなデザインの大きな幕が飾られていた。もちろん本物と違い、デザインは平面的だし、色も少し地味だが、それでも結構な雰囲気が出ている。その幕を背景として、マリインスキー劇場管弦楽団と合唱団が並ぶ。

 プログラムと出演歌手が一部変更になったが、それでもプログラムが面白い。最初にチャイコフスキーの「ロメオとジュリエット」が演奏されたあと、「エフゲニー・オネーギン」から「レンスキーのアリア」(テノールはエフゲニー・アフメドフ)と「グレーミン公爵のアリア」(バス:エドワルト・ツァンガ)と「手紙の場」(ソプラノ:エカテリーナ・ゴンチャロワ)、ボロディンの「イーゴリ公」からの「コンチャーク汗のアリア」(バス:ミハイル・ペトレンコ)及び「ポロヴェッツ人の踊り」と続き、第2部にはプロコフィエフの「十月革命20周年のためのカンタータ」という珍しい作品が置かれるという、かなり凝った選曲だったのである。

 通常の反響板がないため、1階席24列中央で聴いた限りでは、オーケストラの音はやや拡散して平面的になったような感はあったものの、そこは馬力のあるマリインスキー劇場管、それなりの雰囲気を出して鳴り渡る。といっても、「ロメオとジュリエット」は、音響の所為か、あまり冴えた演奏とは言い難かった。

 それより、「オネーギン」からのアリアを歌った3人の歌手が、未だ若い世代らしいけれどもフレッシュな表情の声を聞かせてくれたのが快かった。
 ただ、残念だったのは、当初予定に入っていたアレクセイ・マルコフ(バリトン)が出なかったことで━━彼を初めて聴いたのは6年前のリヨンで、キリル・ペトレンコ指揮の「エフゲニー・オネーギン」のタイトルロールを歌っていた時だったが、今年夏のザルツブルクでの「ファウスト」のヴァランタンを聴き、見事な成長を示していたのを知って、大いに注目していたのである・・・・。

 「ポロヴェッツ人の踊り」は、ゲルギエフがこの曲になるといつも見せる力任せの爆演スタイル。勢いは猛烈だが、荒々しくて騒々しい。この劇場の合唱団の粗っぽさも露呈するが、曲が曲だけに仕方がないのかもしれない。

 後半のプログラム、プロコフィエフの「十月革命20周年のためのカンタータ 作品24」を初めてナマで聴けたのは貴重であった。
 1930年代にスターリン政権の厳重な統制下にあって書かれ、レーニンの語録やスターリンの演説などからの引用を含んだ革命賛美の闘争的な歌詞にあふれたものだが、音楽はプロコフィエフとしてはかなり荒々しく、時には「鉄と鋼」時代の作風を思わせて、すこぶる興味深いいものであった。
 ロシアが仮に今でも「ソビエト連邦」であったなら、その国のオケが日本公演でこんな歌詞のカンタータを演奏したらさぞや嫌味になったろうが、幸い今日では、すべてが「歴史の産物」として受け止める時代へ変貌しつつあるのである。

 それにしても、ゲルギエフはなぜこういう作品を日本公演で取り上げる気になったのか? 
 それを訊こうと思って、終演後、もうシャワーを浴びようと服を脱ぎかけていたゲルギエフの楽屋へ、強引に割り込んだ。私の顔を見るなり、彼が喋り出した話は、要約すればこういうものだ━━。
 「聴いたのは初めてだろう? 僕は英国やヨーロッパ各地でこれを指揮したが、みんな初めて聴いたと驚いていた。内容(歌詞)は、ロシアの中でも、いろいろ(苦笑して)大きな問題があり、議論が絶えないね。だが、内容は別として、とにかく、音楽がいい。輝かしくて生気にあふれ、本当に素晴らしい。プロコフィエフの、この音楽そのものをみんなに聴いてもらいたいと思うんだ」。
 プロコフィエフに熱中し、彼のオペラや交響曲はもちろん、すべての作品を演奏することを目標としているゲルギエフらしい意見であった。

コメント

お邪魔します。最近のゲルギエフは、何を取り上げても通る(受け容れられる)アーティストになってきました。数年おきに来日する指揮者ではありえないプログラムですよ。プロコにご執心ならそのうち「鉄と鋼」、「戦争終結によせる凱歌」、「イワン雷帝」あたりを(まだ生で聴いたことがないので)。

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