2017-05

2016・10・10(月)ズービン・メータ指揮ウィーン・フィル

      サントリーホール  7時

 昨日の川崎での「ザ・グレイト」では、木管群を指揮者のすぐ前面に配置、弦を後方に配置して、実に不思議な音のバランスをつくり出していたとのこと。そちらを聴きに行けばよかった、とほぞを噛む。
 今日のプログラム、モーツァルトの「リンツ交響曲」と、ブルックナーの「第7交響曲」では、そんな変わったことは行われず、通常の配置で、普通に演奏された。コンサートマスターはライナー・ホーネック。

 「普通」とはいえ、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の、特に弦の瑞々しい、気品のある美しさは、相変わらず天下一品の趣がある。特に今日は、これまで何度となく聴いたウィーン・フィルの演奏会の中でも、一段と弦のアンサンブルが豊かだったような気がしたのだが━━。
 「リンツ交響曲」が開始されたその時から、その柔らかい音色にうっとりさせられたが、この温かいヒューマンな世界こそ、今日ではこのオーケストラだけが守り抜いている特質だろう。

 「第7番」でも、第1楽章冒頭からその弦が豊かに拡がって行く。第2楽章でも、第1主題、第2主題と、━━いや、この楽章全部があの弦の分厚い、しかも美しく透明な音色の響きに委ねられている。この曲のそうした特徴を改めてまざまざと認識させてくれたのが、今日のメータとウィーン・フィルの演奏だった。
 さらに第4楽章コーダの冒頭、6オクターヴ以上に拡がった弦のトレモロがつくり出す巨大な空間の中で、ホルンが主題の断片を取り上げる個所がある。昔クレンペラーとフィルハーモニア管のレコードを聴いて以来、私が好きでたまらなくなった個所だが、ここはよほど弦がしっかりしていないと、またよく響くピアニッシモで演奏してくれないと、その大空間の素晴らしさは生まれて来ないものだ。今日のメータとウィーン・フィルの演奏は、そこでほぼ完璧に近い形で満足感を与えてくれたようである。

 なお、付け足しのようになるが、第1楽章と第4楽章の各コーダでオルゲルプンクトのように轟くティンパニを、2人の奏者に叩かせていたのが興味深かった(これはカラヤンもやっていたような記憶があるが・・・・)。

 かように、ウィーン・フィルの良さを存分に発揮させたメータであった。
 彼は、良いオーケストラをそれに相応しく豊麗に演奏させるという美点の持主である。バイエルン州立歌劇場での「トリスタンとイゾルデ」などその最たるものだった。
 ただ彼の場合、音楽がその段階だけにとどまっていて、魔性的な力とか、精神の微妙な襞とか、音色の陰翳の変化とかいった要素は、どうも希薄に感じられてしまうのである。そこが、物足りないと言えば物足りないのだ。そのあたりが、同じウィーン・フィルで同じブルックナーを演奏しても、ハイティンクとは違うところであろう。

 だが、やはり日本の聴衆は忘れてはいない。あの5年前の東日本大震災の直後、フクシマの風評のために外国人演奏家たちが軒並み来日を取りやめた中にあって、彼がいち早く敢然と日本に駆けつけ、東京でチャリティコンサートの「第9」を指揮(2011年4月10日)してくれたことを━━。聴衆は今日もメータを、ソロ・カーテンコールに呼び出した。ただし彼はホーネックを一緒に連れてステージに出て来た。このあたりが、メータらしい気遣いである。
    別稿 音楽の友12月号演奏会評

コメント

ズービン・メータ

連日連夜お疲れ様です。メータがウィーン・フィルを振って独墺系音楽をやると、ほとんど例外なく「その段階」に留まるのです。スワロフスキー門下の逸材が何故?ですが、亡くなられた高名な評論家の言のように、「メータのブルックナーなど聴きに行く方が悪い」のか?私は今回7日の会に行きました。ドビュッシーは、バトンテクニックが冴えに冴え、オケは完璧なバランスでそれに応え、ラヴェルは、ミニ・オケコンの様相を呈して、楽しかったです。ここでも前半のブラームスは退屈でしたが。マエストロは、入退場時足元を気にするしぐさで、大事にしていただきたいと思いました。

お疲れさまです。確かハイティンクもウィーン・フィルとの「7番」で例のティンパニを二人の奏者に叩かせていました。(蛇足)これは、私の聴いた初めてのウィーン・フィルの生演奏でした(前プロはシェーンベルクか何か・・・)。

大阪で拝聴しました!

ウィーンフィルの品格を感じました。おっしゃる通り弦のアンサンブルが素晴らしかったです。こんな綺麗な音色、聴いた事ない!胸が詰まるひとときでした!私事で恐縮なんですが、月末に腫瘍の手術を受ける予定でかなり落ち込んでましたが、励みになりました。ウィーンフィルの皆様、生きる支えを有難うございます!

忘れてはいけない

いつも拝読しております。最後の一節、心に沁みます。音楽は音だけではありませんね。

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