2017-03

2016・9・24(土)スダーン指揮東京交響楽団「ファウストの劫罰」

      サントリーホール  6時

 ベルリオーズの名作、劇的物語「ファウストの劫罰」。2週間前の高関健と東京シティ・フィルの演奏に続く「9月の競演」の第2陣、

 桂冠指揮者ユベール・スダーンと東京交響楽団の定期公演。協演は、マイケル・スパイアーズ(ファウスト)、ミハイル・ペトレンコ(メフィストフェレス)、ソフィー・コッシュ(マルグリート)、北川辰彦(ブランデル)、東響コーラス、東京少年少女合唱隊。コンサートマスターは水谷晃。

 演奏時間は、第1部が約59分、第2部が約72分というところだったから、スダーンのテンポはやや遅めだったと言えるだろう。
 だがスダーンらしく、音のつくりは細部まで疎かにしない。彼が音楽監督を務めていた時期のような完璧な音の均衡は弱まってはいるけれど、ベルリオーズの管弦楽法の面白さは、随所で再現されていた。普通なら合唱の中に埋没してしまう管楽器群の細かい動きが、均衡を保った響きの中ではっきりと浮かび上がって聞こえていたのは、私としては初めての体験である。これはもちろん、東響の演奏の良さによるところも大きいのだが。

 スダーンのベルリオーズは、「不意打ちと情熱の爆発」ではなく、この作曲家の叙情的で端整な面に光を当てたものだろう。
 つまり、フランス音楽史上の異端児ではなく、ドイツ・ロマンティシズムの模倣者でもなく、のちにドビュッシーの印象主義へ移り変わって行くフランス・ロマンティシズムの流れの中に、この作曲家を位置づけていたのではなかろうか? マルグリートの2つの歌━━「トゥーレの王」と「ロマンス」でのオーケストラの響きを聴いていると、そういう思いも浮かんで来る。
 こうなると、同じベルリオーズの「キリストの幼時」を、もしスダーンが指揮したらどんなものになるか、聴いてみたい気がする。

 主役歌手陣は好調。ミハイル・ペトレンコは、いつからスキンヘッドになったのかしらん? 昔は舞台での挙止もちょっと陰気な雰囲気だったのに、近年は明るくなり、今日はえらくハイで陽気な感じだった。身をよじらせておどけて歌い、ひとりだけ演技を行い、━━悪魔としてよりも「道化的な案内人」のイメージが先行したか。声質も含め、もう少し悪役的な凄味があったほうがドラマティックになると思うのだが・・・・。

 ファウスト役のスパイアーズは、ソリスト陣の中でただ一人、暗譜で歌っていたところを見ると、この役は得意のレパートリーなのだろう。骨太なテナーだ。だがファウストとしては、失礼ながら、もう少し知的な雰囲気が欲しいのだけれど・・・・。

 コッシュは、実力から言っても充分だ。澄んだ声で美しく、やや抑制気味に歌っていたが、この作品でのマルグリートは、こういう表現が的を射ているだろう。
 ともあれ、この主役3人の粒のそろった歌唱は満足すべきものだった。

 合唱。P席に配置された東響コーラス(安藤常光合唱指揮)が、すべて暗譜で歌っていたのはえらいものである。バランスもいいし、ここのコーラスは昔から水準が高い。また、東京少年少女合唱隊(長谷川久恵合唱指揮)がステージ上の上手側に板付で配置されていたのは好ましい。これを客席に持って来たりすると、最後の浄化された場面で聴衆の注意力を散漫にしてしまうからである。
  音楽の友11月号 Concert Reviews

コメント

「ファウストの劫罰」(9月24日と9月25日)

「ファウストの劫罰」について、結局、サントリーホール、ミューザ川崎と2日続けて鑑賞。ホールの違いによる響きの違いを楽しみました。9月25日の公演会場であるミューザ川崎は以前から「人の声に向いているホール(特に合唱)」であると感じており、この日の公演でもやはり、その思いを強くしました。合唱がサントリーホールよりクリアで好きな響き。
ソリストにとってはいずれのホールも気持よく歌えたようですが、スパイアーズによれば、「サントリーホールは響きが自分にかえって来てすごく気持ちが良い」ということのようです。サントリーホールは世界的にも特別な会場のようですね。

オーケストラの演奏は2日目の方が全体的に良かったと思います。ただし、1カ所、2日目は演奏がゆっくり過ぎて、何となく歌手と演奏が合わないと感じたのが「トゥーレの王」の歌のところでした。
歌手は1日目も2日目も特に違いを感じず、両方とも良かったですが、2日目の方が全体にリラックスしている印象。しかし、1日目の緊張感も悪くなかったです。
特にペトレンコはこの役が初役なので、初日は緊張していたものの、導入部の数フレーズを除くと1日目の緊張感の方により魅力を感じました。今回はコンサート形式でしたが、いずれ舞台で歌ってくれるのではないかと期待します。
スパイアーズはこの作品を得意としているので一人暗譜でしたが、印象は東条さんと同じで「歌はうまいけど…。何かもう一つ欲しい」という印象でした。2日続けて聴いたのですが、時間が経過すると記憶が薄れる感じ。ソフィー・コッシュは知的なマルグリートでした。

上演の質は2日の間に大きな差はないものの、観客の熱狂はサントリーホールの方が圧倒的。川崎のお客さんはおとなしいです。
指揮者のスダーンは演奏に対しては2日目の方が圧倒的に良いと感じているようです。
カーテンコールで観客に投げキスしていましたし、サインの列に並んだところ、「2日続けて聴いてラッキーだね(2日目の方が良い)」と言っていました。

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