2017-05

2016・8・26(金)武満徹&タン・ドゥン

   サントリーホール  7時

 サントリーホール30周年を記念する、「国際作曲委嘱作品再演シリーズ」と銘打たれた演奏会。
 タン・ドゥンが東京フィルハーモニー交響楽団を指揮し、第1部では、今年が没後20年になる武満徹へのオマージュとして「ジェモ―」(同シリーズ第1回委嘱作品)を演奏、また第2部ではタン・ドゥン自身の「オーケストラル・シアターⅡ:Re」(同第17回委嘱作品)を演奏した。
 そして、それぞれ2人の指揮者を必要とするこの2曲では、三ツ橋敬子も参加して大活躍していた。

 編成が複雑なので、ステージ転換にも時間がかかるが、プログラムはこの2曲だけではない。そのあとには、武満徹の「ウォーター・ドリーミング」(1987)と、タン・ドゥンの「3つの音符の交響詩」(2010)も演奏されたのである。演奏終了は9時半になった。

 「ジェモ―(双子座)」は、初演の時に聴いた記憶があるが、それ以降、聴く機会が、あったか、なかったか? とにかくステージ上に2組のオーケストラを必要とするので、そうそう簡単にプログラムに乗せられる作品ではない。
 開始と同時に、あの独特の陶酔的な武満トーンがいっぱいに拡がりはじめる。ドビュッシーにそっくりなフレーズが突如飛び出して来るのに愕然とした記憶も、今日そこを聴いて思い出した。
 ただ、こんなに長い曲だったかな、という気もして━━初演の時にはたしか30分くらいだったという記憶もあるのだが、今回はそれよりさらに5~6分長かったのではないか? 素晴らしく魅力的な曲ではあるが、なぜか今日は、この長さを受け止めるのが難しかった。

 一方、タン・ドゥンの大作「オーケストラル・シアターⅡ:Re」は、聴衆に「ホン・ミ・ラ・ガ・イ・ゴ」と唱えさせるアレだということを、解説を読んだ時に思い出した。ただ、今日のようにバス(スティーヴン・ブライアント)の他、メインの指揮台で正確に振っていた三ツ橋敬子と、上手の指揮台で象徴的な身振りをしていたタン・ドゥンの2人ともに大声を出す作品だったということまでは覚えていなかったのだが・・・・。

 今日は、2階席に点在した管楽器奏者たちが響かせる特殊な音と、客席の聴衆(特に2階席後方の、気取らないタイプの人たち)がハミングで響かせる「レ」音、及び前出の呟きの声が、非常に美しい。それらが大音響のバンダでなく、静かな弱音であるがゆえになおさらである。これをRC席という「客観的な位置」から聴いていると、タン・ドゥンが試みた「空間的な響き」のアイディアは、たしかに効果的なものだった、と改めて認識させられる。

 最後の「3つの音符の交響詩」でも、大オーケストラを単に楽器集団である以上に人間の集団ととらえ、演奏させるだけでなくハミングさせ、歌わせ、叫ばせ、足踏みさせるという手法が採られる。曲自体が面白いかどうかは別だが、手法は注目されるだろう。
 しかし、オケの楽員さんたちも、歌ったり喚いたりと、大変だ━━東京フィルもよくやった。これは、あの「ウェストサイド・ストーリー」の「マンボ!!」どころではない。

 それにしても、武満徹とタン・ドゥン━━これほど感性の正反対な作品が、一つのステージで2曲ずつ交互に演奏されるという試みは、こういう機会でなければ起こりえないだろう。聴く方も疲れたが、実に興味深い演奏会である。
 だが、どちらが好きか、と問われれば、私はもう一も二もなく、武満に左袒する。

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