2017-03

2016・8・22(月)セイジ・オザワ 松本フェスティバル(4)
小澤征爾&ファビオ・ルイージ指揮サイトウ・キネン・オーケストラ

      キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館) 7時

 前半にファビオ・ルイージがオネゲルの「交響曲第3番《典礼風》」を指揮。
 後半には、予定通り、小澤征爾がベートーヴェンの「交響曲第7番」を指揮した。
 コンサートマスターは、オネゲルが小森谷巧、ベートーヴェンが豊嶋泰嗣。

 いつものように、オケの楽員に交じってステージに登場した小澤さんは、客席から見たかぎりでは元気そう。指揮台に上る動作には些かも不自然さはないし、指揮する姿も、いつもの彼だ。
 指揮台にはもちろん椅子が置かれており、演奏が流れに乗っている時にはそれに腰を下ろして指揮するが、楽章の開始や、ここぞという個所では、さっと立ち上がってオーケストラを制御する。ただ、一つの楽章が終るたびに指揮台を降り、上手側ヴィオラの前に置かれた椅子に腰を下ろして何か飲料を摂るのが、わずか1~2分の休息とはいえ、少し痛々しい。

 しかし、暫時の休息後、指揮台に戻る時には、全身に「さあやろう」という勢いの雰囲気が甦る。「7番」第1楽章の長い提示部をリピートしはじめた時には、むしろ聴いているこちらの方が「何もそこまで・・・・」と、彼の体力の消耗を心配してしまったが、後半2楽章では反復個所なしで進められた。こちらが気をもんでも仕方がないことだが、とりあえずは安心した次第である。

 スケルツォ楽章はほぼ座ったままで指揮したが、しかしそのあとは休憩を取ることなく、すっくと立ち上がるや、全軍を率いて第4楽章に突入した。このあたりの気魄たるや、最近の彼の体調を知る者にとっては、何か凄まじいものを感じさせる。クライマックスのコーダでは、もはや腰を下ろすことなく、オーケストラを昂揚させて行く。そこでの身のこなし、指揮の姿などは、まさに以前の小澤征爾そのままだった。

 小澤とSKOは、この「7番」を、このフェスティバルの第2回━━1993年に演奏したことがある(9月4日)。徳永二男と加藤知子がトップに並んで弾き、工藤重典、ローター・コッホ、カール・ライスター、エヴァレット・ファースらが名を連ねていた当時のSKOとの「7番」は、まさに火のような勢いの、嵐のようなクレッシェンドの迫力を利かせた演奏だったことを記憶している。
 今夜の演奏を、それと比較するのは意味のないことだ。ただ、今夜のそれは、部分的には往年の演奏を彷彿とさせる個所もなくはないものの、やはり緊迫感や集中力、音楽の構築の緊密度などにおいて、かなり違った出来になっていたのは仕方のないことだろう。

 またSKOの方も、敬愛する小澤のもとでの入魂の大熱演だったことは確かだが、そのわりにフルート・ソロが粗っぽかったり、第2楽章最初のヴィオラとチェロによるリズム主題でのアンサンブルの音色が濁ったりと、名手ぞろいの集団にしては腑に落ちぬ個所も時に聞かれたのである。しかし第2楽章の中盤以降をはじめ、各所に温かくヒューマンな感性が聴かれたことは、現在の小澤征爾とSKOの変わらぬ絆をうかがわせるものとして、得難い至福のひと時と言えるものであった。

 客席総立ちの拍手と歓声の中、3回に及ぶオーケストラ全員を含めたカーテンコールでは、小澤さんもあの「休憩」などどこかへ吹き飛んだような雰囲気。Tシャツに着換えてしまっているルイージまでステージへ引っ張り出しての賑やかさだった(とはいえ、かなり疲れたのではないかという気もするのだが・・・・)。

 そのルイージが、前半で指揮したオネゲルの交響曲「典礼風」も、ややドライな音色と激しい力感に富んだシャープな演奏で、SKOのパワーを発揮させる快演だったことを忘れてはならない。

(付)午後には雲も拡がったものの、雨らしい雨は降らず。結局この3日間は台風とは全く無縁の松本だった。午前中はまた快晴だったので、松本美術館で今日から始まっている「グラミー賞特別展」を観に行く。これは2013年に小澤征爾指揮で上演されたラヴェルの「子どもと魔法」が、グラミー賞の「最優秀オペラ録音賞」を受賞したのを記念する展示である。レプリカは小型だが、ラッパ式蓄音機を模した黄金色に輝くたいへん美しいものだ。

 今年のOMFでは、もう一つ、「Gig」(28日)を聴きに行くことにしている。
      ⇒別稿 モーストリー・クラシック11月号

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2508-721d91b8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」