2017-05

2016・8・21(日)セイジ・オザワ 松本フェスティバル(3)
ファビオ・ルイージ指揮サイトウ・キネン・オーケストラ「復活」

       キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)  4時

 「オーケストラコンサート Bプログラム」は、マーラーの「第2交響曲《復活》」。
 ファビオ・ルイージが、昨年のマーラーの「第5交響曲」に続き、今年も登場して指揮。合唱がOMF合唱団と東京オペラシンガーズ、声楽ソロは三宅理恵(ソプラノ)と藤村実穂子(アルト)。コンサートマスターは矢部達哉。

 席が1階前方右端という、「仕事」には全く適さぬ位置だったので、演奏全体の特徴を厳密かつ客観的に判断するには少し無理があるけれども、とりあえずこの位置で聴いた印象では、これは実に鮮烈な演奏であった。
 冒頭、弦のトレモロの中に低弦が割って入る瞬間からして、切り込むような鋭い力が炸裂する。全曲にわたり鋭角的なリズムを基盤にした、冷徹で明晰な音の構築が続く。
 ロマン的で忘我的な熱狂というタイプの演奏ではなく、どこかに醒めた理性を感じさせる演奏であり、そのへんが感動の度合いの分かれ目になるかもしれない。だが、みなぎる強靭な力感はただものではない。

 昨年の「5番」と同様、このサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)を指揮する時のルイージは、ふだんとは全く違った峻烈な音楽の容貌(かたち)を見せる。
 彼は本来、そんなにデモーニッシュな演奏をつくる人ではない。例えばMETで「ジークフリート」を聴いた時など、そのレガートな音づくりには不満さえ感じたものだった。だがその彼が、このSKOを指揮すると、全く正反対の、熾烈で尖った音楽を聴かせるのである。こういうルイージは、私の経験の範囲では、SKOと組んだ演奏でしか聴けないように思う。

 一方SKOも━━この30年間私が聴き続けて来た経験では、このオケがこれほどエキサイティングな演奏で応える指揮者は、小澤征爾以外では、彼ルイージあるのみだ(強いて挙げれば、他にハーディングか)。
 つまり、指揮者とオーケストラの双方が、ふだんは出せないような力を出し切る。これは、まさに相性の良さ、と言えるのではないか。

 ともあれ、ルイージはこれで、3年連続の当フェスティバル出演となった。彼に対するオーケストラの反応、および客席のスタンディング・オヴェーションなど、どうやらすべてが上々のように見える。

 SKOの機能的な力量も、また並はずれたものだろう。ただ、以前とは違った状況も気にならないではない。前述のように、聴いた席が楽員の最前列しか見えない位置なので、カーテンコールの時に初めて、ルイージから次々と起立させられて讃えられる管楽器セクションの首席奏者たちが軒並み外国人勢であることを知った。まるでPMFオーケストラみたいだ、と驚いた次第だ。楽員も随分代替わりしたものだとは思うけれども、管に日本人首席奏者はいないのか、と心配にもなって来る。

 声楽陣では、だれよりも藤村実穂子が傑出していた。完璧なドイツ語の発音、揺るがぬ音程とリズム、厳しく求道的な「復活」への歌━━。アルトのパートが毅然として屹立するさまは、彼女ならではの凄さである。
 これに対しソプラノの三宅理恵は、藤村とは対照的に感情過多の歌唱という気もするが、惜しかったのは、ソプラノ合唱の中から柔らかく浮き上がるはずの最初の個所が少々不安定で、合唱とのハーモニーにほんの僅かだが乱れを感じさせたことだった。
 6時40分終演。
       ⇒別稿 モーストリー・クラシック 11月号

コメント

ルイージは最適な後継者候補の一人だと思いますが、フェスティバルの未来について語ることを皆が避ける雰囲気は、理由は分からなくないけどちょっと変です。

サイトウキネン 復活

東条先生、ご無沙汰してます。
いつも楽しく拝見させていただいています。

私は初日19日の復活聴きました。昨年の5番と同じく、ルイージさんとても尖った、しかし歌うところはしっかり歌う素晴らしい演奏でした(アマチュアなのに偉そうに申し訳ありません!)歌のソリスト、合唱団も素晴らしかったです。

ただ先生のおっしゃる通り、管楽器の1番奏者がほぼ外国人奏者というのも、少し寂しい気もします。聴いてる方としては世界的名手の素晴らしい演奏を聴けるのはとても嬉しい事ですが、本来の趣旨からは少しかけ離れてしまった感があるような、、、
日本人管楽器奏者も素晴らしい方がたくさんおられます。これからもこのような形が続くのでしょうか、、、

とはいえ、本当に素晴らしい演奏会でした。未だに余韻を楽しんでおります。

唯一残念だっのは、19日の復活は明らかに「ブラボー」が早過ぎるお客様がおられ、、、苦笑。これも仕方ない事なんでしょうが、、、

長々失礼しました。またお会い出来ます事、楽しみにしております。

小澤さんは一流の外国のオケを常時振っておられ、サイトウ記念オーケストラを同等のレベルにして演奏したいと思っているのでしょう。
日本人の管楽器奏者も優秀になっているけれども体格的な面でどうしても太刀打ちできないのではないか。
以前、兵庫芸文オケで「ツsラストラ」を聞いたとき、ヨーロッパの歌劇場の主席が客演していてその底から沸きあがる音の厚みの迫力に感嘆したものです。

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