2017-07

2016・8・18(木)鼓童&下野竜也指揮新日本フィル

    サントリーホール  6時30分

 「太鼓芸能集団 鼓童」の、「創立35周年記念コンサート」と銘打たれた3回の演奏会の一つ。
 この日は、オーケストラの協演によるプログラムのみで構成されている。演奏されたのは、伊佐治直の「浮島神楽」(世界初演)、猿谷紀郎の「紺碧の彼方」(同)、石井真木の「モノプリズム」(1976年作品)、富田勲の「宇宙の歌」(1994年作品)の4曲だった。

 最も長大な「モノプリズム」を3曲目に置き、序破急とでもいうべき流れで音響的かつ重量感的な頂点を築いておいて、最後に寛いだ曲想の小品「宇宙の歌」を演奏して結ぶところ、なかなか巧い選曲である。
 猿谷紀郎の「紺碧の彼方」は管弦楽パートに極めて多様な色彩が聴かれ、石井真木の「モノプリズム」は前半に管弦楽の発言のみが続く━━という曲想ではあるものの、どの曲においても鼓童の「日本魂」が炸裂する、胸のすくような音の饗宴に彩られた作品であった。

 このような日本太鼓と洋楽器のオケが同一ステージで激突した場合、日本のホールではどうしても太鼓が音量の上で勝ってしまい、オケが霞みがちになるのは致し方ないだろう。
 ただこれが、欧米のホールで演奏した場合には、空気の違いというのか、洋楽器の響きがぐっと大きくなり、太鼓と対等に聞こえるという不思議なケースになるものである━━これは1974年秋に、小澤征爾と新日本フィルが甲州太鼓のチームと組んで欧米演奏旅行(国連デー参加を含む)した際に私が直接体験したことなのだが。

 それにしても、鼓童のメンバーの、鍛え抜かれた肉体から生まれるあの視覚的な美と、音楽的な力の美との調和は、形容しがたいほど素晴らしい。巧くは言えないが、これこそまさに日本の芸術の根源的な力の一つなのだろう。
 オーケストラとの協演は、鼓童の幅広い活動のほんの一部でしかないが、その分野でもこのような無限の可能性を感じさせる音楽を創れるということが、わくわくするような感動を私たちに与えてくれる。

 新日本フィルを制御した下野竜也の指揮も、すこぶる見事だったと思う。彼はプログラムに、鼓童との協演が決まった時には「僕もマラソンしなければならないのか?」と不安になった、というエッセイを載せているが、いかにも彼らしいユーモアである。

 ちょうど40年前に作曲された「モノプリズム」が、今でも生命を失っていないことを改めて認識できたのもうれしい。
 この曲には、私も特別な思い出がある。作品の世界初演は、小澤征爾がタングルウッド音楽祭で行なったが、日本初演はその1976年の12月、東京文化会館における新日本フィルの定期演奏会で、やはり小澤征爾が指揮して行なったのだった。その頃、FM東京では新日本フィルのライヴ番組をレギュラーで編成していたので、当然私たちもその演奏を録音したのだが━━。

 鼓童の前身「鬼太鼓座」の、その太鼓の大音響たるや、当時としては驚天動地の物凄いものに感じられたものだ。家鳴り震動、ホールの天井からゴミがバラバラと落ちて来るほどだから、マイクで太鼓とオーケストラのバランスを取るのは、当時のワンポイント録音システムでは至難の業。
 小澤さんが心配して「ほんとに凄い音がするんだよ、大丈夫?」と事前に私に声をかけてくれたが━━こういう時、いつも小澤さんはこまかく気を使ってくれた━━こちらも「ウーン、やるしかありません」と答えるしかなく、確かに実際の録音は、どう贔屓目に見ても、あまり芳しいものとは言えなかった。

 それでも、とにかく放送はした。困ったのはその直後、NHKが、「尾高賞の審査でみんなが聴きたいと言ってるんで、テープを貸してくれ」と頼んで来たことだった。
 その前年にFM東京が芸術祭大賞を獲った「カトレーン」(武満徹)の録音は自信満々だったから、喜んでNHKにも貸した(で、尾高賞を取った)が、この「モノプリズム」の録音は、大NHKに聴かせるには、少々心許ない。「録音バランスがいいとは言えないし、お聞かせするにはとても」と、一度は丁重に断ったのだが、是非にと言われ、仕方なく貸した。
 結局、「モノプリズム」は、めでたく尾高賞を受賞した。

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