2017-07

2016・8・6(土)マスネ:オペラ「ドン・キホーテ」

      滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール  2時

 これはびわ湖ホールの「オペラへの招待」シリーズ。
 何年か前に新国立劇場で上演された際には、原曲のフランス語読み「ドン・キショット」が題名として表示されたが、今回は「ドン・キホーテ」という、一般にも判りやすい表記が使用されている。

 出演歌手陣は、びわ湖ホール声楽アンサンブルを核としたダブルキャスト。今日は初日で、林隆史(ドン・キショット)、内山建人(サンチョ・パンサ)、山際きみ佳(ドゥルシネと山賊の頭目の2役)ほかの出演。
 林隆史は━━本当はこの題名役としては、もう少し老騎士らしく声の重い人の方がいいのだが━━しかしよく響くバス・バリトンの声で好演していた。

 ピットでは、園田隆一郎指揮の大阪センチュリー交響楽団がいい演奏を聴かせてくれた。とかくスカスカになりがちなこの曲のオーケストレーションを、緻密に分厚く構築していたのは立派である。第4幕の幕切れ、サンチョが主人を擁護する個所がこれだけ昂揚して演奏されれば、もう御の字だろう。

 今回の演出は菅尾友。ドゥルシネと山賊の頭目を同一の歌手(メゾ・ソプラノ)に歌い演じさせ、ドン・キホーテを嘲笑し拒否する社会と、その純な精神を受け入れる社会のそれぞれ象徴としての意味を持たせた演出上の発想は、興味深い。
 山賊の親分が女性であることの是非は別として、それがドゥルシネ姫の別の姿を象徴的に描くという━━あたかも「タンホイザー」で、エリーザベトとヴェーヌスという2人の女性を同一歌手が演じるのと同じような発想を取り入れたことは、面白い解釈である。

 ただ、それはいいのだが、今回のように巨大な金属製の棚のような物体が暗い舞台上に並び、それを移動させる黒子の裏方までが舞台に登場し、群集が絶えず動き回っているという構図になってしまうと、そういう細かい人物表現が理解しにくくなる。
 つまり、主人公たちの性格が(歌手たちが若いせいもあって)さっぱり際立たないのである。

 サンチョが初めてドラマの前面に躍り出てドン・キホーテを弁護する場面でも、彼が群衆ともみ合ったりするシーンが長すぎ、この主従の偉大さや高貴さが堂々と強調されるシーンとしては、些か散漫なものになってしまったのではないか。また第5幕で、サンチョが主人の「衣装」を抱えて絶えずガサガサと音を立てていたことは、音楽を邪魔するもとになり、少なからず苛々させられた。

 とはいうものの、全体として見れば、この上演は力作といえよう。若い世代の歌手たちの奮闘を称えたい。
 ちなみにこれは、字幕付き原語上演。新国立劇場の上演の際とは異なり、山賊たちも「そこだけ日本語で」喋るなどという珍奇なことはなかった。

 休憩1回(第3幕の後)を含み、4時20分終演。京都5時26分発の新幹線で帰京。

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