2017-11

2016・7・29(金)上岡敏之指揮九州交響楽団

     アクロス福岡シンフォニーホール  7時

 上岡敏之が九響に客演するのは,、今回が初めてとのこと。
 この日のプログラムは、バッハ~ウェーベルンの「6声のリチェルカーレ」(「音楽の捧げもの」より)、モーツァルトの「協奏交響曲変ホ長調 旧K.297b」、ブラームスの「交響曲第1番」、アンコールに同「ハンガリー舞曲第1番」。コンサートマスターは扇谷泰朋。

 九響は、上岡独特の陰翳の濃い音色と響きとを完璧に具現し、その流動的なテンポにも完全に応えていた。
 初手合わせでありながら、上岡がかくも九響を完全に彼流の手法で制御していたことは、彼の卓越した手腕を証明するものだろう。一方、九響が━━上岡の「どこが1(拍目)だか2だか判らない、猛烈に回し続ける」指揮の中で━━彼の音楽の個性的なイメージを見事に把握し、昂揚感のある演奏を創ったことは、楽団の演奏水準の高さを物語るものだろう。
 弦楽器群には、上岡が要求する羽毛のような、しかも厚みのある、良き時代のドイツのオケによくあるような音色が反映されていた。

 冒頭の「リチェルカーレ」は、おそろしく陰々滅々たる演奏に感じられたが、これは私が朝、東京で中村紘子さんの訃報に接し、かなり気が滅入っていたせいもあったかもしれない。
 「協奏交響曲」でも、オケは柔らかく控えめで、ソリストたち━━佐藤太一(ob)、タラス・デムチシン(cl)、岡本秀樹(hn)、埜口浩之(fg)、みんな良かった━━の闊達でリズミカルな演奏を、背後で流れるように支える、といった感。

 ブラームスの「第1交響曲」は、いわゆる孤高の英雄的な風格とか、重厚壮大とかいったイメージの演奏ではなく、しっとりした翳りをもった、凝縮したモノローグ風の世界━━とでもいうか。これまた、いかにも上岡らしい。
 第4楽章のあの有名な幅広い第1主題にしても、そこにつきものの「解放感」がほとんどない。やっとたどり着いた安息の世界、という感を全く与えない演奏なのである。
 そもそも上岡の音楽の本質は、そういう優しさのようなものを拒否し、常に緊張を絶やさぬ音の中に身を置く、というタイプのものなのかもしれない。
 コーダでは、最後のコラールの歓呼の個所だけを極度に遅いテンポで響かせただけで、あとはテンポを速めて激しく終結したが、そこにも開放的な歓呼といった雰囲気はほとんどなく、どこかに翳のようなものが漂い続ける演奏なのであった。

 なお、全体の構築は、いかにも上岡らしく、細部にまで綿密に配慮されたつくりである。第1楽章主部はかなり速いアレグロだが、第150小節前後と第420小節前後のような個所だけは極度にテンポを落して神秘的な、怪奇な雰囲気を形づくる、といった具合だ。
 少し神経質ではあるが、非常に面白い「ブラ1」の演奏だった。

コメント

Mozart

昨日、会場でお見かけしお声かけようかと迷いましたが遠路、ご苦労様です。ブラームスは圧感で九響もなかなかの熱演でワクワクしました。ところでモーツアルトは最悪と思います。クラリネットだけはソロとして満足できますが、オーボエとファゴットは2階席では耳を澄まさないと聞き取れないし、ホルンは間違いだらけで肝心のパッセージは誤魔化しており、なんとも腹立たしい限りです。これが九響では日常化しています。非難されるべきで褒めるには値しないと思われます。

ぶらいちは、ひじょうに そくそくと、悲しみの降り積もる、しかし決然とした横顔がみえる、演奏でした。
 チケットを取った4.14日の夜に、熊本県で大きな地震が発生しました・・・わたしには、熊本県の復興への願いとも取れました。

上岡マエストロの感性は、実に非凡でなりません、今回も、打ちのめされてしまいました・・

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

中村紘子さんの訃報には私もショックを受けています。お若すぎる・・・・。大輪の華でした。ご冥福を心よりお祈りいたします!

話は逸れますが、このごろ、世界で活動してきている日本の期待の人達が、日本に本拠地を置く(引き上げて来る)ような傾向が結構見受けられます。
ある程度「限界」を見られたのかもしれませんが、まだまだこれから踏ん張って!と思わないではおれません。
小澤征爾さんみたいに頂点を極めてから戻るのはなかなか難しいでしょうが、とことん世界各地の頂きを日本人として目指して欲しい。
昇り竜の山田和樹さんや、飽く無きチャレンジャー佐渡裕さんを応援したい。

サマバケさんのコメントに共感

特に大野和士は、今が踏ん張り時なのになぁ・・・。やはり山田に期待するしかないのか・・・(スイス・ロマンド管を蹴ってモンテカルロへ行ったが)。井上道義の日本人離れした芸風なんかは海外、特にアメリカのオーケストラで成功しそうなのに。なんでだろう・・・?

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2494-8cf4247a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」