2017-03

2016・7・17(日)ナガノ・チェンバー・オーケストラ第2回定期演奏会

      長野市芸術館メインホール  3時

 長野県長野市に落成した「長野市芸術館」。市役所の隣にあるのだが、初めて訪れた者には、どこから入るべきか、すこぶる判り難い。街路からはセブン・イレブンばかりが目立つので、まさかその横の狭い通路が入口だとは、ちょっと気がつかない。

 このホールは、先頃「2階席の見切れ」の問題で話題になったが、私も朝日新聞のその記事ではコメントを出した手前、どのように改造されたのかと興味があったので、念のため、開演前にその席に座ってみた。舞台手前の部分だけ見えないということはあるものの、改造の結果は一応、まずまずと思われる。ただ、子供や、小柄な人には、ちょっと苦しいかもしれない。

 ホールは新しい。内部は白い木目調で統一され、非常にシンプルな雰囲気だ。客席数は1292、椅子もゆったりしている。残響も適度にあり、1階席やや前方で聴いたが、音響は良いのではないかと思われる。

 さて今日は、ホールの開館記念行事、「アートメントNAGANO2016」第4日。このホールを本拠とするナガノ・チェンバー・オーケストラの第2回定期演奏会だ。ちなみに、「第1回」は前日に行われたばかり。指揮は、長野市芸術館の芸術監督・久石譲である。

 この新設のオーケストラは、長野県在住の演奏家を結集した楽団というわけでない。N響、東京フィル、東京都響、東京響、新日本フィル、九響、関西フィル、読響、シュトゥットガルト放送響などから腕利きのメンバーを集め、フリーランスや音大准教授も加えた室内管弦楽団規模のオーケストラだ。コンサートマスターは東京フィルの近藤薫。メンバーの中には長野県出身の奏者も何人かいる由。とにかく、みんな小気味よいほど上手い。
 この楽団を、単なるフェスティバル・オーケストラとして将来も続けるのか、それとも、この名手たちのオケを基として、将来における長野独自のプロ・オケ誕生を見据えているのかどうか━━。

 今日のプログラムは、久石譲の「シンフォニア」、ウラジーミル・マルティノフの「カム・イン!」、ベートーヴェンの「交響曲第2番」というもの。これは「ベートーヴェン・シンフォニー・ツィクルス」としても組まれているシリーズの由で、昨日は「第1番」が演奏されたはずである。

 久石譲の作品(リコンポーズを含む)は、このオケの定期公演の、少なくとも第7回までの中に、5曲も取り上げられている。また開館記念演奏会の中でも、他にいくつか演奏される。さながら「久石譲作品展」だ。
 プロデューサーのカラーを前面に押し出す試みそのものは私も支持するけれど、しかし芸術監督が、その自作を屡々主催公演のプログラムに入れて行くことが果たして妥当なのかどうか、私には判断しかねるが━━。
 しかしとにかく、今日の「シンフォニア」は、彼のミニマル・ミュージック志向を強く出した作風で、第2楽章「フーガ」では木管のエコー効果のような魔術的なサウンドも聴かれたし、特に第3曲「ディヴェルティメント」ではベートーヴェンの「第9」冒頭のパロディも登場し━━それがブルックナーの第3番などの交響曲と共通性があることが図らずも明らかにされたのが面白い━━聴衆を楽しませただろうと思う。

 マルティノフの「カム・イン!」は、近藤薫のヴァイオリン・ソロをフィーチャーした「弦とウッドブロックとチェレスタのための音楽」とでもいう作品。叙情的なカンタービレの作風で、大変綺麗ではあるが、同じ曲想と形式とを30分近く延々繰り返して行くので、えらく長く感じる。もうわかったから、そろそろ終ってくれないかな━━という気にさせられたのは事実である。

 ベートーヴェンの「2番」は、久石の指揮が、実にユニークだ。まるでリズム・ボックスに乗っているようなイン・テンポの演奏、少し騒々しいけれども強いパンチのアタック、陰翳を排除した攻撃的な音色と響きのアプローチ・・・・。
 だが久石譲のふだんのフィールドから、これが彼の感じるベートーヴェンの「アレグロ・コン・ブリオ」であり、「アレグロ・モルト」なのだな、と理解してみる。あとでプログラムを読み返してみたら、「私のベートーヴェンはロックととらえてもらっていいぐらいに激しくなるはず」という彼のコメントが載っていた。なるほど、それが彼の個性だろうし、もし彼が取ってつけたように、伝統的な演奏スタイルを真似たら、かえっておかしなことになるだろう。聴き手の好みは別として、彼は彼のスタイルを貫き通すことが最も自然なのだ。

 東京・長野間は、「かがやき」で85分前後。近い。

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