2017-05

2016・7・6(水)ミハイル・プレトニョフ・ピアノ・リサイタル

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 使用ピアノは、プレトニョフお気に入りの「SHIGERU KAWAI(KAWAI SK-EX)」。以前より音色が清澄になり、ふくよかになった気もするが━━ピアノが変わったのか、それとも楽器が年月を経て「鳴る」ようになった所為か。

 プログラムは、第1部がバッハ~リストの「前奏曲とフーガ BEV543」、グリーグの「ソナタ」と「ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード」。第2部がモーツァルトのソナタ「K311」「K457」「K533/494」という構成。

 それぞれの3曲は、有機的な繋がりを持たせるために切れ目なしに演奏された。1曲終るごとに軽い拍手は起こったが、プレトニョフは客席に軽く頭を下げるだけで、すぐ次の曲の演奏に移る。
 第1部は50分、第2部は1時間を要し、更にアンコールを3曲(リストの「愛の夢第3番」と「小人の踊り」、ラフマニノフの「バルカロール」)も演奏したので、終演は9時半頃になった。

 前半でのグリーグが、あまりグリーグらしくなく手の混んだつくりで演奏されたのももちろん興味深かったが、それ以上に興味深かったのは、後半のモーツァルト3曲だ。近年流行のスタイルとは正反対の、現代のピアノが持つ、厚く重々しく、温かく陰翳の濃い音色を駆使し、ペダル効果を最大級に━━時にはエコー効果のように━━発揮させた演奏のモーツァルトである。
 しかもテンポやデュナミークにも、極度に変幻自在、主観的な解釈が施されている。緩徐楽章では自由な遅いテンポが採られ、解体寸前か、停止するか、と危ぶまれるほどの音楽になることさえあり、著しい沈潜を極める。

 ポゴレリッチほど極端ではないにしても、それを連想させるような演奏構築ではある。フィナーレでは明るい音色になって終結感をもたらすが、それが決して解放的な歓びの表情にはならないところも、面白いモーツァルト解釈といえるだろう。アンコールでの演奏も、よく言えば洒落たユーモア、逆に言えば怪奇さと表現主義的な強烈さ・・・・といったものを導入した解釈だった。
 超個性的なプレトニョフ・スタイル、いまだ健在である。

コメント

幽玄なモーツアルト

7/2日西宮、兵庫芸文にて同じプログラム聞きました。彼らしい凝ったもの。グリーグは珍しいものでしたが二部のモーツアルトは彼の歩く動作のごとく,とぼとぼと....老成したというか通常の明るさの勝ったモーツアルト像とは対極的なもので幽玄なるモーツアルトであった。
特に457は絶品の境地でした。アンコールはリスト「愛の夢」のみであっさり終わった。

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