2017-08

2016・7・5(火)飯守泰次郎指揮東京シティ・フィル

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の第299回定期演奏会。
 桂冠名誉指揮者・飯守泰次郎の、ブルックナーの「交響曲(選集)ツィクルス最終回として、「テ・デウム」と「交響曲第9番」が演奏された。コンサートマスターは戸澤哲夫。

 「9番」のあとに「テ・デウム」が━━ではなく、「テ・デウム」の方が先に演奏されたが、これは賢明な選択である。
 作曲者自身の意図がどうだったかはともかく、「9番」の第3楽章のあとに別の作品━━たとえ「第4楽章の完成版」であろうと━━をつけて演奏するのは、全く無意味であると私も思う。あの第3楽章のアダージョの、この世ならざる浄化の響きで全てが閉じられるのが最も感動的だからである。

 とにかく今日は、その「最終回」だったわけだが、それもあってか、客席はほぼ満席に近いほどに埋め尽くされた。シティ・フィルの定期としては、久しぶりに見る大盛況である。いつもこうであってほしいものだと、心底そう思う。

 「テ・デウム」では、東京シティ・フィル・コーアの合唱と、安井陽子、増田弥生、福井敬、清水那由太のソリストたちが協演した。
 だがこの曲では、飯守の遅いテンポをオーケストラが━━特に合唱団が保ち切れなかったという感がある。ソリストたちも、技術的には問題は無いのだが、演奏としては何となく散漫な印象を抑えきれない。テンポの遅いこともさることながら、音楽の密度の薄さが問題で、全曲最後の個所でも、ちっとも盛り上がりがないのである。━━これは、「飯守のブルックナー」ではあるけれども、残念ながらまったく共感できない。

 「9番」第1楽章冒頭でも、このテンポの遅さが持ちこたえられない感もなくはなかったが、展開部の前あたりからはそういう弛みも消え去り、全管弦楽のfffなどには飯守らしい狂気のごとき激しさも漲って、演奏は怒涛澎湃たるものになって行った。
 それからは、まさに「飯守のブルックナー」である。第2楽章も充分に魔性的な激烈さにあふれていたが、スケルツォでの演奏はダ・カーポ以降の方がアンサンブルに均衡が取り戻されたようだ(その代わり、勢いは1回目の方が勝っていた)。第3楽章最後の浄化の終結における金管も、まずまずこれなら、といった「決め」であった。
 シティ・フィルの演奏も、以前より精度を増しつつあるようである。

 聴衆の飯守に対する熱狂的な長い拍手は、単にツィクルスの仕上げを賞賛する以上のものがあった。客席の雰囲気には、いつもよりも活気があったし、特にホワイエの賑やかさは久しぶりだった。終演後もお客さんは何か興奮冷めやらずの雰囲気、なかなか帰ろうとしないのも、久しぶりに見る光景である。

 さてシティ・フィル、9月の新シーズンの定期第1弾には、常任指揮者・高関健の指揮するあの「ファウストの劫罰」(ベルリオーズ)が来る。
   音楽の友9月号 Concert Reviews

コメント

十分な準備がなされていて、東条先生言われるように精度の高いものになった。終わって欲しくないと思える演奏だった。

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