2017-10

2016・6・22(水)レーピン×マイスキー~華麗なる協奏曲

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 ワディム・レーピンがアウェルバッハの「ヴァイオリン協奏曲第3番《深き淵より》」を日本初演、ミッシャ・マイスキーがチャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」を弾き、そして2人がブラームスの「二重協奏曲」を演奏するという一夜。
 協演は、広上淳一指揮日本フィルハーモニー交響楽団。

 これは、レーピンを芸術監督とする「トランス=シベリア芸術祭」の一環。11日から名古屋、群馬、札幌、東京で計6回の公演の公演が行われ、今夜がその最終日だった。
 芸術祭の出演者には、レーピン、マイスキーの他、ニコライ・ルガンスキー、諏訪内晶子、バレエのスヴェトラーナ・ザハーロワら多数の顔ぶれが見え、かなりユニークなプログラムが組まれていたようである。ただ、あまり大々的にPRされていなかったようにも思われるが・・・・。

 ロシアの現代作曲家であり、文学者、美術家でもある多様な才能の持主レーラ・アウェルバッハ(レーラ・アヴェルバッハ)は、2009年にPMFのレジデント・コンポーザーを務めたこともある。
 あの時に聴いた弦楽四重奏と管弦楽のための作品は、四重奏部分が東京クァルテットの演奏で映えていたわりには、管弦楽部分が表情に乏しい感があったものだが、今回のこの協奏曲は、オーケストラ・パートの物々しさ、怪異さ、粘りの強さ、重々しさなどで聴き手を驚かせる。まるで先年、別の人間の名前で発表されて世間を騒がせた、ある交響曲のそれを連想させるようなおどろおどろしい曲想━━これは休憩時間にある知人が漏らした感想なのだが、なるほど、言い得て妙である。
 管弦楽法の多彩さは認めるし、レーピンの熱演にも拍手を贈りたいが、35分を超える長さを惹きつけるには少々凭れる感もある協奏曲ではあった。

 そのあとのチャイコフスキーは、これはもう定番だけあって、特にアウェルバッハの作品のあとに聴くと、いっそう美しさが際立つ。マイスキーのチェロが朗々と、実によく風格豊かに鳴るから、なおさらである。
 この第1部、それぞれの曲の性格のせいで、レーピンのカーテンコール回数がマイスキーの半分だったのは、ちょっと気の毒でもあった。

 日本フィルは、奇しくも今日が創立60年の記念日である。
 それを記念してレーピンとマイスキーが、ブラームスの「二重協奏曲」の演奏を「誕生日」の日本フィルに捧げると表明、演奏前に広上がその旨を場内にアナウンス。聴衆と一緒に2人も日本フィルに拍手を贈るという一幕があった。

 それに相応しく、今日の日本フィルは広上の指揮のもと、見事に引き締まってスケールの大きな、豊かな潤いにあふれた演奏をしていた。「ロココ変奏曲」の冒頭などには、そう、これがチャイコフスキー━━といった音色が聞こえたのである。前のアウェルバッハがあまりにおどろおどろしい音であったために、余計に清涼な印象をあたえたのかもしれぬ。マイスキーのソロと一体になった演奏も見事だった。
 一方ブラームスでは、日本フィルは、まるで「ヴァイオリンとチェロのオブリガート付き交響曲」でもあるかのような壮大な鳴りっぷりで━━しかし、作曲者がこれを当初「第5交響曲」にする意図があったことを思えば、あながち見当はずれのアプローチでもなかっただろう。
 2人のソロをも食ってしまった感のある、誕生日の日本フィルの大熱演。

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