2017-10

2016・5・23(月)佐渡裕指揮トーンキュンストラー管弦楽団

     サントリーホール  7時

 昨年9月、シェフに就任した佐渡裕と共に来日したウィーンのトーンキュンストラー管弦楽団。全14回公演の今日は第9日。

 プログラムには彼の肩書が「音楽監督」と記載されており、ご本人の「挨拶」でも同様になっているが、オケのサイトにはそういう肩書でなく、「Chefdirigent Yutaka Sado」と表示されている。したがって、これはやはり正確に「首席(主席)指揮者」と呼ぶべきではないのか。ただしこのオケの場合、首席指揮者の権限がどんな範囲にまで及んでいるのかは知らないけれども。

 それはともかく、今日のプログラムは、レイ・チェンをソリストにしたベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」と、R・シュトラウスの「英雄の生涯」。
 そしてオーケストラのアンコールは、ヨハン&ヨーゼフ・シュトラウスの「ピチカート・ポルカ」と、R・シュトラウスの「ばらの騎士」のワルツの最終部分だった。

 総合的な印象を結論から先に言うと、佐渡とこのオケの相性は、予想以上に良いように感じられる。未だ最初のシーズンの段階だが、ステージ上の雰囲気はすこぶる良い。佐渡が自然体で音楽をつくり、オケに敬意を払って彼らの個性を生かそうとしているせいもあるかもしれない。

 特にベートーヴェンの協奏曲では、その佐渡の衒いのない指揮と、オーケストラが持つ民族性が程良く合致していて、たっぷりとした響きの、流れの良い、均衡豊かな演奏がつくられていた。この曲のオーケストラ・パートが持つ流麗な曲想と芯の強い性格とが、これほど自然な形で表れていた演奏は、そう多くはないだろう。
 そしてレイ・チェンも、明晰で輝かしい、しかも誠実で雄弁なソロで、見事に主役を務めていた。27歳、台湾出身、2009年のエリーザベト王妃国際コンクールに史上最年少優勝をも果たしているこの若者は、素晴らしい才能の持主である。

 「英雄の生涯」では、佐渡の指揮は、叙情的な曲想の個所では自然に歌わせ、劇的な個所では猛然たるテンポを採った。
 「英雄の戦い」の部分では音も少しカオス気味になっていたが、これは標題音楽の面から、佐渡も承知の上でやっていたのだろうと思う。
 例の77の前では、大きな「矯め」を2回作ったが、ことさらな演出と言えばそのくらいなもので、その他はやはりストレートな部類に属する指揮だ。

 ただ、第1部の「英雄」での、オーケストラを滔々と流して押して行く部分の中で、音楽が時に色彩感や表情を失い、形だけのものになる部分も感じられた。このあたりに、佐渡の抱える昔からの問題点が表われてしまっていたようにも思う。

 トーンキュンストラー管弦楽団は、この曲でも優れた均衡豊かな響きを聴かせた。ベートーヴェンではあれほど毅然としていたティンパニが、「英雄の生涯」では何故か暴力的な叩き方をしたような向きもあったが、これは指揮者の注文か。ホルン群は素晴らしい。
 また特に「英雄の伴侶」の個所では、女性コンサートマスターが情熱的なソロを弾いて気を吐いた。「かなり性格の強い伴侶」といったイメージだが、適度の濃厚な表情も備えて、見事なコンサートマスターぶりだった。

 終結での管楽器と打楽器群の短い盛り上がりはすこぶる効果的だった。そのあと、聴衆は沸きに沸いた。
 カーテンコールでオケが指揮者を讃えるくだりでは、ステージ奥にずらり並んだ金管奏者たちが一斉に拍手を佐渡に贈っていた光景が印象的だった。
 彼がこのサントリーホールで、聴衆と楽員からこれほど熱狂的に拍手を贈られたことは、滅多になかったことだろう。彼とこのオケの、これからの良き活動を期待しよう。

コメント

どっち?

好きなのか嫌いなのか、
はっきりしてください(笑)

白か黒かを決めることではありません。
ただ、「予想以上に良い」「昔からの問題点」「滅多になかった」という表現を見れば、評価は自明でしょう。

大阪での同プログラムを拝聴しました。14公演もラスト2回というお疲れも感じないような質の高い音色でした。「ウィーンから音楽の贈り物」として熊本支援募金箱を設置してくださって有難う!

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