2017-08

2016・4・2(土)プレガルディエンが歌う室内楽版「冬の旅」

    東京文化会館小ホール  7時

 上野で開催中の「東京・春・音楽祭」の「歌曲シリーズ」の一つ。テノールと6人の器楽奏者によるシューベルトの「冬の旅」という、実に興味深いコンサートだ。今年の「東京春祭」は、面白いプログラムが多い。

 テノールの━━といっても近年はハイ・バリトンの色合いが濃くなって来た人だが━━おなじみの名歌手クリストフ・プレガルディエンが歌う。
 協演陣も、小山裕幾(フルート)、金子亜未(オーボエ・ダモーレ)、西川智也(クラリネット)、長哲也(ファゴット)、日橋辰朗(ホルン)、ジョセフ・ペトリック(アコーディオン)という錚々たる顔ぶれだ。

 編曲者はフォルジェという人だそうだが、プログラムには紹介が載っていないので、私は知らない(CDも持っていないので・・・・)。
 かなり手の混んだ編曲という印象だが、この種の編曲モノは、一度聴いただけではなかなかその真価を理解し難いものである。というのは、聴き慣れた原曲の素晴らしいイメージから脱却するのは、そう容易いことではないからだ。

 今回も、何よりまず、あのシューベルトのピアノ・パートがいかに完全無欠なものであり、そのピアノと声楽がいかに完璧な調和とバランスで結びついているか━━それを改めて強く感じる結果となったことを告白しておかなくてはならない。シューベルトが終り近くにつくり出した、あの白々とした、身の毛のよだつような虚無感といったものは、この編曲版からは全く体験できなかったのである。

 とはいえ、興味深い編曲だったことは確かだ。あの名高い前衛的なツェンダーの編曲とはまったく異なる傾向のもので、あくまで声楽のパートを中心に構築して行くタイプの編曲である。
 「旅籠屋」では例外的に、器楽奏者たちが弱音のヴォカリーズでハーモニーをつけて行くという編曲が行なわれていたが、これがまたとてつもなく美しかった。そして曲順もシューベルトのそれとはいくつか異なっているが、これはヴィルヘルム・ミュラーの詩集の最終決定稿に従った順序によるものであるとのことである。

 プレガルディエンは、もともと感情の起伏の非常に大きい歌い方をする人だから、今回も歌唱には劇的な表現が強く現われていた。協演者たちも巧い。「郵便馬車」でのホルンなど、いわゆる「ラッパ節」であることは確かだろうが、それにしても日橋さんのホルン信号は鮮やかであった。

コメント

Winterreise

私も大体東条さんと同じ意見です。モノクロの映像の方がカラーよりはるかに雄弁で繊細さに満ちていると思うことがありますが、そんな感じ。通常版の「冬の旅」を知らない人が聴いたらどんな印象をもつのかな、とふと思いました。

編成を見れば響きの見当は予めつく。興味のポイントは初めから、原曲版とどう印象が異なるかということ。基調を決めたのはアコーディオン。ドライでシニカルでもの哀しい。

650席のコンサートホールではない場所を夢想して、自分をそこに飛ばしてみていた。たとえば場末の酒場の片隅、あるいは路上。喧騒や雑踏、埃や煙草の匂いにまみれて。ゆえにDas Wirtshausは不意討ち。アコーディオンがオルガンの音のように聞こえてきて、あっさり涙腺が崩壊してしまいました。

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