2017-05

2016・3・26(土)山田和樹&日本フィルのマーラー&武満ツィクルス

     オーチャードホール 3時

 早朝の新幹線で帰京。
 今日から、指定席は原則として車内検札は無し、になったそうである。まあ、東海道新幹線はこれまでにも早めに検札に来ていたから、さほどのことはない。昔、東北新幹線がまだ検札をやっていた頃、乗車してから1時間以上も経って、ウトウトしはじめた時に、わざわざこちらの肩をゆすって揺り起こして検札をした中年の車掌がいたが━━あれは思い出しても腹が立つ━━当節ではそのようなことは流石になくなっていたし。

 このツィクルスも回を重ねて、早くも第6回。武満徹作品は「ノスタルジア~アンドレイ・タルコフスキーの追憶に」、マーラーは「交響曲第6番《悲劇的》」という組み合わせ。前者でソリストを、後者でコンサートマスターを務めたのは扇谷泰朋。前者でコンマスを務めたのは千葉清加だった。

 マーラーの「6番」は、どちらかといえば明るい音色の演奏だ。悲劇性を感じさせる演奏というより、若々しい、止まるところを知らぬエネルギーに沸き返った演奏といったらいいか。ホルンをはじめ、金管群の快調さが、今日は印象に残る。なお、第2楽章にスケルツォを置いた楽章配列が採られていた。

 第1楽章は、マーラーの指定は「アレグロ・エネルジーコ、マ・ノン・トロッポ」(快速にエネルギッシュに、ただしあまり速すぎることなく)だが、山田はやや速いテンポで、「マ・ノン・トロッポ」よりも「エネルジーコ」に重点を置いたようなアプローチで指揮していた。
 その推進力はまことに良かったけれども、オーケストラのバランスという点では、やや粗いものがある。トランペットによるあのイ長調からイ短調への一瞬の変化が、ティンパニの豪打とオーボエの大きなフォルティシモ、それにテンポの速さにより、かなり無造作に片づけられ、しかもほとんど聞こえない状態にあったというのは、疑問がある。ただしこれは、意図的に行われたものだろうと思う。

 これを含め、前半2楽章は、勢いで押しまくった傾向なきにしもあらず。
 私の主観では、むしろ最も優れていたのは第3楽章(アンダンテ)であった。緻密でまとまりがよく、各声部も明晰に響き、精妙な表情にあふれた出色の演奏で、このマーラー・ツィクルスの中でも最高の出来の一つだったのではないかという気がする。

 フィナーレはもう阿修羅のごとき突進で、つくづくこれは大変な曲だという思いを新たにさせられるが、しかしその分、どこに本当の頂点があるのか判らないような構築の演奏になっていたのではなかろうか。
 そのフィナーレでのミスター・ハンマーは、なかなかの芝居巧者だ。早めに大きなハンマーを振り上げて、構えている。このハンマー、奏者によっては、照れなのか真面目なのか、何かさり気なく打ち下ろしてしまうことがある。それはそれで悪くはないが、しかしやはりここは、大見得切って打ち下ろす方が面白い。

 「ノスタルジア」は、もちろん静謐で、独白するような叙情的な美しさにあふれた演奏であった。昔、日本の陶器美術の写真集を見ながらこの曲をラジオで聴いていて、形容しがたい陶酔に引き込まれたことがあったが、今日も山田和樹と日本フィルの演奏を聴きながら、ふとそれを思い出していた。ただし、この静謐さは、この大きなホールの後方では、どう響いたろうか?

 余談だが昔、井上道義さんが東京文化会館で新日本フィルを指揮した時、ハンマーを下手側の舞台前面に配置して猛烈に打ち下ろさせたことがある。そのたびごとに第1ヴァイオリンの後方プルトの女性何人かの腰がフワッと浮き上がる(本当である)光景は、実に可笑しかった。
 練習の時、井上さんに「いっそ本番で自分が指揮台で叩くのはどう?」とけしかけたら、「やってみようか」とノリノリになり、腕まくりをして両手にペッペッと唾を吹きかけ、ハンマーを握るジェスチュアをしてみせたことがあったっけ。そういえば彼はロイヤル・フィルへのデビューでこの曲を指揮した時には、日本でハンマーを自作してロンドンまで持って行ったことがあった。3回公演をやって、本番の最後の1発でそれは壊れたそうである。

 ツィクルス、次の「7番」以降は、来年5~6月になる。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2398-46f3aa21
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」