2017-04

2016・3・25(金)飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団

      ザ・シンフォニーホール  7時

 第207回定期演奏会で、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」(ソロはヤン・イラーチェク・フォン・アルニン)と、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」。指揮は首席指揮者・飯森範親、コンサートマスターは首席客演コンマスの荒井英治。

 ソリストのフォン・アルニンが、ラフマニノフをなんともクソ真面目に、整然と古典派作品的に弾くのには驚いた。ウィーンで国立音大教授や国際ベートーヴェン・ピアノ・コンクール芸術監督・会長を務める人となれば、なるほどという感じである。こういう、いわゆるヴィルトゥオーゾ的でないスタイルのラフマニノフ像というのも、それはそれで興味深いアプローチの仕方だが、実際に聴いてみると、やはりどうも面白味に欠けるというのが正直な感想。しかし、ブラヴォーは少し飛んでいた。

 私の目当てだった「マンフレッド交響曲」では、予想以上にきっちりと構築された演奏を聴くことができたのが嬉しい。特に細かい音型が連続することの多い中間の2つの楽章では、緻密なアンサンブルが発揮され、曲に織り込まれている標題性も的確に再現されていた。こういう精密なアンサンブルは、飯森がこのオーケストラの首席指揮者に就任した直後のブラームスなどではあまり聞かれなかったものだ。

 これはおそらく、あの「ハイドン・ツィクルス」がもたらした成果ではなかろうか。
 飯森はかつて山形響で8年間にわたりモーツァルトの交響曲ツィクルスを実施、その過程で山響のアンサンブルを飛躍的に高めて行ったことがある。その彼が日本センチュリー響でハイドンのツィクルスを実施すると発表した時、それがアンサンブルの整備を隠しテーマとしていることは、オケに詳しい人ならすぐに解ったはずである。オケにとって、モーツァルトやハイドンをきちんと演奏することがいかに大切であるかは、世界のオーケストラ界の常識だからだ(ハイドンがモーツァルトに比べて客に受けるかどうかは、また別の問題だが、もう始まっている以上、云々しても仕方がない)。

 こういう成果が表れているからには、このまま進めばいい線に行くのではなかろうか? 今日はホルンも充実していたし、他の管楽器セクションも充実していた。弦楽セクションも、カンタービレの個所では美しく澄み切った音色を紡ぎ出していた。

 ただし、弦も管も、大きな課題は「量感」であろう(音量のことではない)。
 その弱音のカンタービレの個所は大変綺麗なのだが、しかし、そこにもたっぷりした膨らみのある音がもっと欲しい。最強奏になった時は、なおさらである。第1楽章終結部や第4楽章の大半での最強奏の音は、残念ながら決して綺麗とは言えない。いっそうの明晰さと豊麗さが欲しいところである。
 そうした豊かさが音の中に生まれれば、全体の演奏にも「陰翳の濃さと多彩さ」や、チャイコフスキーの音楽特有の「白夜的な透明さ」が備わって来るのではないか。たとえば第2楽章中間部などには、音楽の色合いに「明」と「翳り」の対比がもっと欲しいのである。これからに期待したい。

 今回の「マンフレッド交響曲」は、最後は第1楽章コーダを再現して最強奏で終る版ではなく、オルガンを交え、悲劇的に静かに結ばれる版で演奏された。やはりこれが一番良い。それにしてもこの第4楽章は、何度聴いてもヘンな曲である━━。

(注)最後を阿鼻叫喚の修羅場で終る「原典版」は、1992年10月にスヴェトラーノフがロシア交響楽団を指揮して日本で演奏したことがある。ライヴCDもポニーキャニオンから出ていた。
           ☞別稿 音楽の友5月号 Concert Reviews

コメント

飯森/

3/26日の二日目を聞きました。ラフマニノフは特に第一楽章がぽつぽつとした弾き方で違和感がありました、アンコールのシューベルト
即興曲はさすがでしたが。「マンフレット」は初めてなまで聞きましたがcdで聞くより長く感じた。迫力は雲泥の差だが。冒頭から飯森氏の指揮が冴え渡りコントラバスらの音がこのオケとしては今までに聞いたことがない量感がありました。ホルン(客演)、金管も好調で危なげはなかった。ごったまぜのような長い曲ですがチャイコフスキーの甘く陰りのある名旋律が要所に現れる魅力は抗し難い。もっと演奏されていい。

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