2017-08

2016・3・16(水)上岡敏之指揮新日本フィルハーモニー交響楽団

     サントリーホール  7時15分

 上岡敏之の音楽監督への着任は今秋だが、とにかく「新日本フィルのこれからを占う」という意味もあって、かなりの注目を集める演奏会だった。いくつかの商売敵(?)のオケの事務局スタッフも来ていたほどである。

 プログラムは、シューベルトの「第1交響曲」とマーラーの「第1交響曲《巨人》」。
 前者では、木管の和声の音色を重視し、それらをしばしば前面に浮かび上がらせ、かつ和音のアタックを柔らかめに響かせるという、ユニークな音の構築が採られていた。
 いかにも上岡らしい手法だが、このタイプの音づくりにはあまり慣れていないらしい新日本フィル━━正反対の音を持ったアルミンクらの指揮者たちを長年シェフとして戴いて来たのだから、それも仕方ないかもしれない━━としては、些か演奏がぎこちない。第1楽章などは少々無理をしているなという感もあった。

 それでも、楽章を追うごとにまとまりがよくなって行ったようにも思われ、特に第2楽章と、第3楽章のトリオと、第4楽章の大詰では、上岡の個性もオーケストラにうまく反映していたようである。
 いずれにせよ、上岡のようなタイプの指揮者を迎えた場合には、いっそうオーケストラの楽員自体に明確な自発性が求められるだろう。コンサートマスターの崔文洙の手腕が要求されるところである。

 マーラーでは、上岡らしく、スコアの再現にかなり細かい読みが示されていた。第1楽章でのチェロと、第2楽章でのヴィオラとに指定されているグリッサンドをこれほどはっきりと浮かび上がらせた演奏は初めて聴いたが、これらは妖艶な雰囲気を醸し出し、この曲に更なるエクセントリックな側面を感じさせる基となっていた。こういうスコアの読みの面白さを出してくれるのが上岡の指揮における一例である。

 ただ、このマーラーでは、上岡の本領は、まだ充分に発揮されていなかっただろう。とりわけ響きの透明さに関しては、理想的な段階からきわめて遠い。彼と新日本フィルとの呼吸が合い、各々の個性が良いレベルで結びつくには、今後それなりの時間を要するのではないか。

 だが、このオーケストラに新風を吹き込むという意味では、彼の音楽監督就任は大いに歓迎される出来事であることはもちろんである。
 日本人指揮者にしては非常に個性の強い音楽をやる人だから、聴衆の好みも分かれるだろう。それもいい。ある程度物議を醸すような指揮者が登場しないと、オーケストラ界は面白くならない。

コメント

当夜の演奏、伺いました。マエストロらしい柔らかく優雅な表現であります。特にシューベルト!
あんなに軽やかで清新な曲がなぜ今まで取り上げてこなかったの?と思いました。
マーラーは 3楽章が圧巻!蜘蛛の糸を手繰るよな弱音のすさまじいこと… 震えが来ました

でも、18日大阪はもっとまとまっていた! 特に弦群が緻密でした

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