2017-10

2016・3・6(日)びわ湖ホールの「さまよえるオランダ人」2日目

    びわ湖ホール  2時

 午前10時から、ホールで「ワークショップ」があった。ハンぺとギールケが今回の演出について交々語り、そのあとにバックステージ・ツァーがあって、200人ほどの客が舞台の「船の甲板」や奈落を見学した。私もついて行く。
 私としては、今回の見事なプロジェクション・マッピングの仕組や、映像の幽霊船とその赤い帆の組み合わせ、幽霊船水夫の空中アクロバットの仕組みなどについて説明を聞きたかったのだが、どうもこれらは、「内緒」らしい。

 その映像の精妙さが、やはり今日の2日目にも眼を惹いた。
 幽霊船が出現し、沖合から怪獣のように突進して来て、いまにもこちら側のノルウェー船にぶつかるんじゃないかと思わせ、観客の肝を冷やさせるあたりは実にうまく出来ているし、第2幕でゼンタの優しい言葉に触れたオランダ人の心に安息感が生まれた時、突然視界が開け、背景いっぱいに穏やかな海と星空が拡がるくだりなども幻想的だろう(星空がもっと綺麗だったらなおよかった)。

 第3幕でのオランダ人水夫連中はゾンビのごとき扮装だが、その背景に大波が荒れ狂い、幽霊船が猛烈に揺れ動くあたりの光景は、何度観ても凄まじい。その波の物凄さは、あの津波の恐怖を思い出させるかもしれない。
 しかし、穏やかに打ち寄せる波の光景も良く出来ている。私は子供の頃に神奈川県の七里ヶ浜に住んでいて、体が弱かったために家の庭から目の前に広がる海と打ち寄せる波(それに江ノ電も)ばかりを毎日眺めていたため、海には特別な思いがあり、この映像は何故か心に沁みた。

 なお昨日、おかしいと思った大詰めシーン、今日は、ゼンタが海に飛び込んだ「あとに」、疾風のように沖へ去りつつあったオランダ船も沈んで行く、という段取りに変わっていた。これなら辻褄が合う。
 だがラストシーン、舵手が目を覚まして起き上がり、ダーラントはじめノルウェーの水夫たちがそれを笑って見守る最終場面は、相変わらず取って付けたような不自然さを感じさせ、それまでのシリアスなドラマを、すべて絵空事として貶めてしまう結果を生む。

 沼尻竜典のテンポが、今日は昨日に比べて少し遅くなっていたような印象も受けたが、これはこちらの気のせいかもしれない。いずれにせよ、当今の「オランダ人」としては、ゆったりとした重厚なタイプの演奏である。

 それにしても、京都市交響楽団の演奏の良さには本当に感心した。弦も美しい。量感もある。この楽団が西日本随一の水準にあるということが、今回の演奏でも証明されていた。これだけピットの中でシンフォニックなワーグナーの音楽をつくれるオーケストラは、わが国では他に読響あるのみだろう。もちろん、沼尻の鳴らし方も巧かったのだろうが。この分なら、来年からの「指環」は大いに期待できる。

 今日の配役は、オランダ人をロバート・ボーク、ゼンタを横山恵子、ダーラントを斉木健司、エリックを樋口達哉、マリーを竹本節子、舵手を高橋淳。
 題名役のボークは長身で押し出しも立派だし、声も強靭に響き、いかつい顔に中世風のメイクがサマになっている。ただ、その他の歌手の皆さんは、もちろん手堅い出来で良いのだけれども、何か力が入り過ぎているというか、歌唱にある種の物々しさが感じられてしまった━━もう一度、19日の神奈川県民ホール上演を聴いてみよう。

コメント

先生、二日間お疲れ様でした。

ラストの夢オチ…しかも、最初からバレバレ…(笑)
ハンペにしては珍しい…と私も疑問に思っておりましたが、ラストシーンを実際に見ると、それなりに感動しました。
救済のテーマが、重苦しい物語を共有し、それに共感していた観客にとっての救済にもなっていたかと…。
朝日を浴びる舵手の姿に胸が熱くなった次第です。

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