2017-07

2016・2・25(木)狂言風オペラ「コシ・ファン・トゥッテ」

      すみだトリフォニーホール  7時

 一般表記は「コジ・ファン・トゥッテ」だが、今回の主催者表記と、脚本・演出を担当した桂米團治が前口上の中でそのように触れていたので、とりあえずそれに合わせることにする。
 これは「狂言風オペラ」とは言い条、狂言とオペラを巧みにミックスさせたスタイルというべきだろう。

 オーケストラはドイツ・カンマーフィル・ブレーメンの管楽器奏者とコントラバス奏者計9名で、ステージ下手側に位置し、全曲の中から抜粋した17曲ほどを美しく軽快に演奏し、時には日本語で芝居に加わったり、「結婚披露宴」の祝杯を一緒に上げたりする。

 芝居の方は、オペラのオリジナルの筋書をほぼ忠実に追い、最後はハッピーエンドで結ぶ構成だが、設定はもちろん「狂言風」に変わる。
 舞台は平安末期の「京の都」で、フェルランドは太郎冠者(茂山宗彦)に、グリエルモは次郎冠者(茂山逸平)となり、ドン・アルフォンゾ変じて「主(あるじ)」(網谷正美)の提案で「博打」に応じ、「源氏と平家の合戦」に出征すると称して姿を消し、変装して別の人物に化ける。
 一方のフィオルディリージは「姉」(茂山茂)、ドラベッラは「妹」(茂山童司)の名で、デスピーナ変じて「乳母」(茂山正邦)に煽られて次第に心変わり・・・・という具合である。

 物語の構成は原曲のオペラと同様、2部に分けられているが、第1部では狂言の台詞とモーツァルトの音楽とがただ交互に進められて行くことが多く、正直言って、これではただ単純に組み合わせただけではないのか・・・・と落胆しかけたのだが、第2部になると俄然舞台は盛り上がり、モーツァルトの音楽に狂言謡を乗せたり、台詞や謡を音楽と細かく組み合わせたりといった手法も活用され、これが思いのほか見事に合致して、不思議な効果を生んだ。

 日本語とクラシック音楽とはそもそもあまり合わぬものだが、この場合は台詞にも狂言謡の流れやアクセントが混じっているので、意外に泰西オペラの響きとぴったり合うのである。
 それとは少し違う意味でだけれども、謡の声がモーツァルトの音楽の旋律に乗った時の感じと、原曲で医者や公証人に化けたデスピーナがわざと妙な声で歌うところには、思わぬ共通性があるのに気がついた。これには、なるほどと感心。

 舞台装置は、屏風程度のものしかないが、小道具としては磁石も出て来るし、結婚式用の祭壇も登場する。乳母(デスピーナ)は神主に化け、「かしこみかしこみ申す」と祝詞(のりと)をあげる。
 和楽器は一切使われないので、冒頭の「狂言一声」などはない。
 最後はアンコールとして、管楽アンサンブルが「コジ」の一節を演奏し、狂言方はお囃子なしの「付祝言」を全員で謡って、めでたくお開きになった。面白い可能性を示した上演であった。
      別稿 音楽の友4月号 Concert Reviews

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