2017-09

2016・2・24(水)児玉宏指揮大阪交響楽団 ワーグナー父子の作品

    ザ・シンフォニーホール  7時

 音楽監督・首席指揮者の児玉宏が任期最後の定期を、得意のドイツもの━━ワーグナーの作品で飾った。これは大阪交響楽団の第200回記念定期演奏会にもあたる。

 しかもプログラムは、大ワーグナーの「ニーベルングの指環」の音楽を児玉自ら接続編纂した版に、息子ジークフリート・ワーグナーの交響詩「憧れ」を組み合わせるという凝ったものである。在任期間を通じてレパートリーの拡大を試み続けて来た児玉らしい、意欲的な選曲と言えるだろう。
 今回は解説を書いた経緯もあり、また文化庁・芸術文化振興基金の調査という仕事もあって、この貴重なプログラムの定期を聴きに行く。

 ジークフリート・ワーグナーの「憧れ」は、シラーの詩に由った20分ほどの後期ロマン派的な作品で、CDで聴くとそれほど面白い曲ではないけれども、今日のようにナマで、それも大きな起伏を持たせた演奏で聴けば、それなりに曲想の変化に富んだ作品だということが解る。何となく、父親の「リエンツィ」を、厚い管弦楽編成で覆った曲・・・・という印象も得るが、これもナマで聴いてこそのこと。ともあれ、得難い一期一会であった。

 「指環」の抜粋メドレーは、他にも何人かの手による版があるが、今回の「児玉宏版」もなかなか興味深いものだ。
 「ラインの黄金」序奏から「神々の黄昏」の幕切れにいたる長い全曲の聴きどころを、原曲の順番を崩さずに配列して切れ目なく接続しているのは他の版と同様だが、ただしこちらは「ヴァルキューレたちの逃走」から「ヴォータンとブリュンヒルデの場」への転換の音楽や、「ヴォータンとジークフリートの場」から「岩山へ向かうジークフリート」、あるいは「ホイホー・ハーゲン」のような場の音楽なども取り入れて独自性を出している。
 ワグネリアンが聴けばニヤリとさせられる面白さも充分であろう。児玉の力作であった。

 大阪響(コンサートマスター・森下幸路)の演奏は、「ジークフリート」の部分以降で弦楽器群が引き締まり、その波打つ豊かな響きにはハッとするような美しさが聴かれた。熱演と言えよう。
 ただ、金管群には不安定さも目立ち、特に前半の「ラインの黄金」部分では極めて苦しいものがあった。このオーケストラの正規楽員は、今日ステージに乗ったメンバーの約半分のはずで、その他の楽員のうち所謂「常トラ」がどのくらいの数になるのかは定かでないが、そういう問題は措くとしても、正規楽員の管楽器セクションには、ソロの面でもアンサンブルの面でも、もっと頑張っていただかなくてはならぬ。ハーゲンがライン河中に突進する場面での「呪いの動機」など、まさにその「呪い」に祟られたような状態になってしまったようである。

 とはいえ前述のように、後半の演奏には目覚ましい昂揚感があり、聴衆も大いに沸いていたのは祝着であった。「大阪でこれだけ盛り上がった《指環》の音楽の演奏が聴ける機会はめったにない、たとえ少しくらいのミスがあっても、そんなことは問題じゃない」と、大阪在住の知人たちは口々に言っていた。
 在任最後の定期を振り終わった児玉宏にも、オケと聴衆から熱烈な拍手が贈られていた。

コメント

児玉/大阪響のワグナー

息子のj。ワーグナーの交響詩は前日の公開リーサルで1時間の練習で聞くことができたこともあり後期ロマン派風の見事なオーケストレイションを楽しめた.コジマが演奏させなかったようだがもっと聞かれても良い曲でした。
「指輪」のオーケストラ作品ハイライトは数年前ジュン、メルクル/大フィルできいたのだが記憶が薄れている。マゼール/N響のものとは「ラインの黄金」のなどかなり違った編曲のように思えた。
確かにラインの黄金のホルンソロは冷や冷やしたがそれ以外はそれほど目だなかったと思いました、特にヴァイオリンの合奏部分ではこ「の楽団しか聞こえてこないピユアな弦が息を呑ませた。それに「ジーグフリートのラインの旅」と葬送行進曲」のTpソロは見事でした。ここをクライマックスとする狙いだったのでしょう。
あくまでもピュアで若い大阪の楽団と江戸っ子(?)のように竹を割ったような児玉さんとの組み合わせがユニークで風通しのいいワグナーが聞けたのだ。後半の盛り上がりはべームの壮年期を思い出したほど。大阪は1969年のバイロイト引越し公演でニルソンやホッターらが歌いヴィラント、ワグナー演出で唯一公演した場所だ。いまだにオーケストラを突き破ってくるニルソンの声が蘇えってきます。最近亡くなったブーレーズが「トリスタンとイゾルデ」をN響で指揮したのだった。今の大阪は昔の面影は無い。....
この日の演奏はひとつの事件ともいえる盛り上がりでした。ぜひ今後も児玉さん、また大阪に指揮しに帰ってきてください。

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