2017-05

2016・2・21(日)飯森範親指揮山形交響楽団 南陽公演

   南陽市文化会館大ホール  4時

 山形新幹線の赤湯駅から1キロほどの距離、昨年10月にオープンしたばかりの南陽市文化会館がある。
 「戦後行なわれた植林が伐採の適期を迎え、林野庁を中心に同木材の利用推進が図られている・・・・南陽市は地場産を中心とする木材で主構造を構成する文化ホールの建設を進めた・・・・杉の芯材を無機質耐火ボードで囲い・・・・」(永田音響設計会報)とあるように、ホールの内部も、アプローチも、全てが木目になっているという珍しい建物だ。ただし、舞台機構など、劇場としての機能を支える構造は鉄骨造りなのだそうな。

 なお大ホールは、昨年12月21日、「世界最大の木造(音楽)ホール」として、ギネスの認定を受けたという。

 その大ホールは客席数1403。客席部分は意外に広い空間だ。
 早く着いたので、ゲネプロの後半を少し聞いたが、竣工間もないホールであるため、音響は些か硬質だ。だが数年経てば、木の質もなじんで来て、素晴らしい音響のホールになる可能性も充分にある。
 ただし問題は、ホールにクロークもコインロッカーも無いため、客はコートを着たまま、あるいは持ったまま席に着かねばならず、そのため恰もホールいっぱいに吸音材を設置したような結果になることだろう。これで、音はかなり吸われてしまい、折角の「木のホール」の価値も半減しかねない。

 さて、今日の演奏会は、飯森範親指揮の山形交響楽団の「ユアタウンコンサート」で、モーツァルトの「交響曲第1番」、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」(ソロは高橋優介)、ベートーヴェンの「交響曲第5番《運命》」というプログラムだ。
 チケットは完売状況で、自由席のため開場1時間前から長蛇の列。雪の中を他の市や町から聴きに来た人も多いらしい。客席は95%以上埋まっていた。聴衆の集中度は非常に高く、咳払いも紙の音も鈴の音も、雑音は一切ない。完全に音楽に没頭している、という雰囲気である。

 山響も快調のようだ。飯森範親のマジックは今なお勢いを失ってはおらず、関西から来た俊英・西濱秀樹専務理事・事務局長らがそれを強力にサポート、楽員と一体となった経営努力で、財政的にも好転が見込まれているようである。その状況が、演奏にも如実に反映しているのだろう。

 特にベートーヴェンでは、音楽に目覚ましい推進性が感じられた。チェロを除く全員が立ったまま演奏したモーツァルトも、以前聴いた時よりも演奏に密度の濃さがあったと思われる。
 ただ、この空間と音響特性のホールの中では、8型のピリオド楽器スタイルを採った古典派音楽にふさわしいアンサンブルが、十全に生きていたかどうかは、微妙な部分もあるだろう。コンサートマスターは高橋和貴。

 コンチェルトでは、21歳の若手、高橋優介が大熱演。極度に粒立ちのいい、明快かつ大きな音で、割り切ったラインのラフマニノフを弾く。ちょっと変わったタイプだが、若さと勢いにあふれ返った演奏だけに、面白い。物怖じせずに伸びてほしいものだ。
 熱演のあまりか、演奏が終った時には鼻血を出してひと騒ぎ。鼻にティッシュか何かを詰め込んだまま挨拶をしてアンコール曲を弾く、という始末で聴衆を爆笑させたが、カーテンコールでの動作も含めて、何か愉快な若者である。

 テレビでも紹介されたらしいが、赤湯というところは、ラーメン好きの人の多い町であるとか。
 帰りの新幹線に乗る前に、マエストロ飯森、西濱専務理事らと「龍上海」なる有名なラーメン店に寄り、「赤湯からみそラーメン」とかいうものを食す。麺は太目で、それには少々抵抗があるけれども、いかにも地方色満載の味で、美味しい。
 しかし、より感動的だったのは、その店にいたお客が全員コンサート帰りの人々で、マエストロ飯森に向かい口々に「今日は素晴らしかった、楽しかった、また聴きに来ます」と礼を言って帰って行く光景であった。
       →別稿 音楽の友4月号 Concert Reviews

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2369-ee2a082e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」