2017-07

2016・2・12(金)シルヴァン・カンブルラン指揮読売日本交響楽団

     サントリーホール  7時

 モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」にマーラーの第7交響曲「夜の歌」というプログラム。

 いくら「夜の歌」をやるからといって、前座に「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」とは・・・・せめて「セレナータ・ノットゥルナ」とかをやったら如何・・・・と、スレッカラシ族はすぐそんなことを考えるものだが、ところが実際に、ちゃんとした指揮者とオーケストラがちゃんとした(?)演奏でこの「アイネ・クライネ・・・・」をやると、これがすこぶるいい感じで、爽やかで新鮮な作品という印象を与えてくれることがわかる。

 読響(コンサートマスターは長原幸太)の弦が良いし、それが8型編成で歯切れよく、たとえば第1楽章の2小節目と4小節目の4分音符のD音を、アクセントをつけたあとにちょっと漸弱気味に弾いたりすると、表情もいっそう豊かになる。
 いわゆるイージーリスニング調の甘さを排した、引き締まった「アイネ・クライネ」は、なかなか好いものであった。特に気に入ったのは第3楽章のトリオ。第2ヴァイオリンとヴィオラの内声部の揺れが豊かで美しく、モーツァルト円熟期の豊麗な音色が、瞬時ではあるが愉しめた。

 第7番「夜の歌」は、今のところ、マーラーの交響曲の中で、私が一番興味を持っている作品である。
 第1楽章に現われる動機の一つが60年代のヒット曲「霧の中のジョニー」と同じフシ(「Johnny、Remember me!」のところです)であるのは、私などの世代には実に面白いことなのだが、まあそれは別として、中間の3つの楽章における怪奇な幻想的雰囲気、大胆な色彩の管弦楽法などは、まさに魅力の宝庫ともいうべきものだ。

 だがやはり、この曲の演奏は、本当に難しいのだろう━━技術的にというより、楽曲全体のバランス構築という面で、である。あの「第6番《悲劇的》」であれほどの怒涛の名演をつくったカンブルランでさえ、今回の「夜の歌」では、何か一つ緊密度に不足し、この交響曲全体の散漫な構築を巧みに整理するところまでは行かなかったのではないか、という気がした。
 それに読響も、今日は少々バランスがよろしくない。ホルンは、このところ聴くたびに不安定さが続いているのだが、これもあまり芳しいこととは言えぬ。

 だがまあ、曲が終ったあとの拍手とブラヴォ―は盛んだったし、大方には楽しんでもらえたのかもしれない。いずれにせよ、第2回の演奏(14日)では、今日感じられたような問題は、おそらく解決されるのではないかと思われる。

コメント

明日は出立の日。南行きの船に乗る。今日は慣れ親しんできた森の妖精達との最後の夜会。やがてパパが迎えに来る。「明日は早いんだから、そろそろお休み。」少年はベッドに戻り眠りにつき、まだ見ぬ国の夢を見る。

そんな感じのマーラー7番。個人的にはこの曲は、グロテスクなホラーではなくダークなファンタジー(オープンエンドの)だと思ってきたので、カンブルランさんのあの設計はストライクゾーンど真ん中でした。

演奏も良かった。従来は指揮者の戦術コンセプトの落とし込みが不充分で、チームワークが機能しないまま無邪気な失点を重ね続けているコンビという印象でしたが、この日は明らかに違った。

管の口調がまるで別団体。音の始末への意識の高まりを感じました(その結果の当て損じなら別にかまわない)。透明に保たれた弦との対流も申し分ない。つまりは他社のお株を奪うような、室内楽的交歓に満ちたマーラー。まさか読響さんからあれほどのデリカシーとニュアンスを得られる日が来るとは思っていなかったので、とても新鮮でした。時と場合によっては能天気に傾きすぎる持ち前の明るい音色も、この日の解釈にはよく合っていたと思う。ストレスフリー、文句なしのクリーンシート。4月以降も是非この調子で。

さすがカンブルラン

未だ真価がわからず、聴くのが億劫というくらいのこの曲で、これほど気持ちよくブラヴォーと拍手を贈れたのは彼の指揮さばきがあってこそでしょう、カンブルランはやはり只者ではないなと認識を新たにした演奏会でした。
せいぜい終楽章でようやくすっきりするというのが常なのですが、この日は第1楽章から各楽器がおもしろいようにくっきり浮かび上がり、光彩陸離と言うとさすがに褒めすぎながら、でも、それほどのワクワク感にも満たされて、もうあとは一気に聴き通したという感じでした。
私がカンブルランに一気にハマったのは今回ご指摘のマーラー6番でした。とにかく脱帽!参りましたっ!とひれ伏したいほどの感動を味わって以来、在京オケの外国人シェフ(なんか適切な表現ではないかもしれません)様々なれど、ラザレフもいいし、ノットもいいし、インバルもよかったし、とみんなそれぞれにいいけれど、私はこの人にまず最初の指を屈したいと思うのであります。

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