2017-06

2016・1・21(木)スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団

      東京芸術劇場コンサートホール  7時

 ブルックナーの「交響曲第8番」(ノーヴァク版)を指揮した桂冠名誉指揮者スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ。満92歳。

 鶴の如く痩せた体躯ながら歩く姿はしっかりしており、指揮台にも容易く上り下りする。そして80分以上の長さの大交響曲を立ちっぱなしで、しかも暗譜で指揮する。実に矍鑠たるものである。
 しかも、その演奏は確固として揺るぎない。速めのテンポとシャープなリズム感で嵐のような音楽をつくり、厳しい緊迫感を失わずに、全曲をバランスよく完璧に構築する。かつてのような、テンポを忙しく動かしたりすることはなくなったけれども、その代り、いっそう厳しい力が演奏に加わったようにも感じられたのだが、どうだろう。

 彼が指揮する音楽には、少しも手垢がついていない。常に新しいものを作品の中に見出して行こうという気迫が感じられるのである。

 特に第3楽章のアダージョは、圧巻だった。深山の湖のほとりに佇むような思いにさせられる清澄な叙情美が、やがて後半の巨大な頂点に向かって昂揚して行くあたりの凄さ。
 そして、そのあとの第4楽章が、これまた疾風怒濤のような演奏で進んで行くのだから、老巨匠の精神力にはただ感嘆するばかりである。

 読響(コンサートマスターは長原幸太)も力感に富んだ演奏を披露した。アンサンブルにはちょっと荒っぽいところもあるものの、スクロヴァチェフスキの若々しい情熱と気迫と、人間味にもあふれた指揮から生まれる演奏の素晴らしさを思えば、そんな細かいところがどうして気になるだろう。

 演奏後、後方の客席から一斉に沸き起こるブラヴォーの響きも美しい。こういうブラヴォーのハーモニーは、以前のブルックナーの「7番」の時以来だろう。ほとんどの聴衆が居残って、スクロヴァチェフスキを単独で2回もステージに呼び出すまで拍手を続け、ブラヴォーを叫んでいた。こういう熱狂も、かつての朝比奈隆以来のことかもしれない。
      別稿 音楽の友3月号 演奏会評

コメント

心からのブラヴォー

ホルンやトランペットの綻びとかがあったりして、完成度は2010年3月の方が上かなといった細かい醒めた感想もあるのはあるのですが、そんなものを通り越して、立っておられるだけでも畏敬の念は禁じえませんでしたし、また、ああこれが最後かなぁという惜別の念もこみ上げてきたりして、万感胸にこみ上げてくる演奏でした。ただただ頭を垂れるのみです。
なお、「後方から一斉に沸き起こるブラヴォーの響きも美しい」とお褒めいただきましてありがとうございます。4列ほど後方に座って、美しいブラヴォーを叫んでおりましたのでそのハーモニーに寄与しております(笑)。本当に心からのブラヴォーでした!

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2352-bc0a4c7e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」