2008-09

6・21(土)飯森範親指揮山形交響楽団東京公演 さくらんぼコンサート

  東京オペラシティコンサートホール

 まずいサクランボを食べたのが原因で子供の頃から大のサクランボ嫌いだった私が、山形響東京公演で即売していた佐藤錦のさくらんぼを出来心で買い、こんなに美味しいものかと遅まきながら感動したのは、数年前のこと。
 今日もロビーの一角にある即売コーナーでは、その佐藤錦のさくらんぼが山のように並び、ゆべし、漬物、イナゴの佃煮など山形の名産品がずらり揃って、黒山の人だかり。その上プレトークでは、音楽監督の飯森みずから山形の観光や物産のPRにこれ努めているので、まさに山形が押し寄せたという感じ。
 いいことだ。地方のオーケストラや音楽祭が盛り上がるためには、その土地と相互一体になることが不可欠だからである。彼のトークがなかなか面白いので、満席に近い聴衆も寛いだ雰囲気になる。

 山形響の演奏は、年に1、2回の割りでほぼ毎年のように聴いているが、そのたびに演奏水準が確実に上昇していることを感じる。その中でも今回は、とりわけすばらしいものがあった。
 最初のキラールの「オラヴァ」は、ミニマム・ミュージックのスタイルに音色の変化を頻繁に加え、ユーモラスな表情も織り込んだ、1回だけ聴くぶんには至極面白い曲だが、ここでの小編成の弦楽アンサンブルは見事な熱気と迫力を作り出していた。
 続くショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」では、仲道郁代のまろやかなピアニズムに、飯森とオーケストラもソフトに協演。

 しかし、何といってもこの日の圧巻は、ラフマニノフの「交響曲第2番」であった。これを聴けば、飯森が着任して以来の、近年の山形響の変貌ぶりに感銘を受けずにはいられないだろう。10年前の鄙びた素朴さ(それはそれで一つの魅力だったが)は既に跡形もなく、モダンで明晰な音色のオーケストラに大変身を遂げている。10型編成ということもあって重量感や厚みといったものには不足するが、室内楽的な精緻さにかけては驚くべきものがあり、それはアダージョの第3楽章で頂点に達していた。弦にはしっとりした響きがあり、管も好調である。
 この上に望まれるものは、作品にふさわしい、ほの暗い陰翳と豊かな情感であろう。今後を待ちたい。

 楽屋を訪ねて、飯森に「すばらしかった。後半2楽章は完璧に近いよ」と言ったら、「そうですかあ?」と、あまり嬉しそうでもないような顔をしていた。「不満?」と訊くと、「いやいや、そんなことはないスけど」。おそらく、彼にはすべてが解っているに違いない。

 終演後のロビーは、飯森のPRが効いてか、買い物客と彼のサインを求める客で猛烈にごった返していた。数ある地方オケの東京公演での中でも、これほど終演後にお客が名産品に群がる光景は他に例を見ないだろう。
 恒例のごとく、さくらんぼ(全農山形のマーク入り)を「10人に1人の割りで当る」抽選で提供していた。今回は幸いに私も当選し、1パックもらってきた。とはいえ、このコンサートを絶賛したのは、さくらんぼをタダでもらったからというわけではない。

コメント

その昔、高校の芸術教室で山形響の演奏を聴いたことがあります(@郡山市民文化センター)。現在も、スクールコンサートに力をいれているようですが、オペラシティでもコンサートをするくらいレベルの高いオケになったんですね〜。

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